10:名無しNIPPER[saga]
2019/02/20(水) 21:04:37.85 ID:vutjDZzWo
パソコンの静かなファン音とかすかなコール音だけが自室に響く中、果たして電話はつながった。
『……もしもし?』
「……お久しぶりですな。覚えておられるだろうか」
『もしや…………【隊長殿】でありますか!?』
訝しげな声が歓喜交じりのそれへと変わった。
やめてくれ。急に大声を上げるものだから耳がキンとする。
「あのなぁ……その呼び方はよしてくれないか」
『いやはや、お久しぶりですなぁ! まさか隊長殿から連絡をいただけるとは。最後にお会いしたのはいつでしたかね? 4年前のアキナオフでありましたか?』
「いや、それは5年前だったな」
『せっかく連絡先を交換したといいますのに、隊長殿は薄情なお方ですなぁ、全く』
電話主は、私が若いころから世話になっているいわゆるオタク仲間だ。本名など知らぬ。
35年前からの長い長い知り合いだというのに、会うのは数年おき、電話やメールでのやりとりもなく、運良くイベントで一緒になれば語り合う程度の仲。
島根県住み、歳が私より二つだけ下という以外の個人情報は持っていない。
それでも彼は私の友人の一人だった。
初めて遠征したイヨちゃんの地方コンサートで出会い、意気投合しその夜に飲み明かした記憶はまだまだ鮮明である。
学生時代、私をアイドルオタクの沼へ本格的に引きずり込んだのは紛れもなく彼に違いない。
あの頃に知り合った同志の中で唯一、現在も連絡を取り合うことのある人物。
「……すまなかったよ、“ウイングワッキー殿”」
『おほっ、その名で呼んでいただけるのもずいぶんと───』
「本題に入ってもよろしいか!?」
少々声を荒げてしまったことを反省し、私はコホンと咳をしてから改めて切り出した。
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