少女は死ぬまで生きるようです
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4:はみがき
2019/02/10(日) 11:39:57.79 ID:eA0evHgOO
『サーチライトに撫でられるまで』3話

「生きなきゃいけないって……具体的には?」

「…んー……生きることを楽しめ、って感じかな」

夏草の生えたあぜ道を死神と歩む。なかなか新鮮な体験だ。
蛙の鳴く声がなんだか寂しげだから、“死神だろうと隣を歩む人が居てくれるのはいい事だな”と素直に思った。
先ほど自分の一番きたない部分を見られたせいだろうか。私は私が思う以上に、この死神に心を開いているのかもしれない。

「いわゆる……友達とカラオケだとか、旅行だ記念撮影だとかそういうの?」

「ずいぶん嫌そうな顔して言うね、そのとおりだけど……そのとおりじゃない」

「……?」


「……たとえ話をしよう。きみの人生に色が無いとする」

「うん」

「それに彩色を施すのが、きみのこれからの仕事だよ。死ぬまでの、ね」

「…………何色でも、いいってこと…?」

「だいせいかい!そゆことっ」

ご機嫌に歩く死神とは対照的に、私の眉根には深い谷が刻まれていた。
…………わたしの楽しみとは、何だっただろう。
……それがわからないから、死にたかったんじゃないか。

「ねぇ……私のパレットには色が無いみたい」

「そっかー。それじゃ、今から旅をしよう」

「……旅って……わたしなんの準備も、」

「人生だって命がけの旅なんだぜ?」

「旅をするのに、いのち以外は必要ないよ。友達とかカメラなんかもいらない」

「死神に命はあるの…?」

「痛いとこつくなー……いいからほら、どこ行くか考えて!」

「えーと…じゃあ…」



こうして旅が始まった。
死ぬまでの旅路で、私はどんな色を拾って行けるだろうか。



「そういえばキミ、名前なんていうの?」

「……詩織。死神さんは?」

「んー……ブラウン…は男っぽいな」
「……ビャクヤ。百夜でいいや」

「自分の名前なのにずいぶん適当に決めるんだね」

「ふふ、名前なんて名前でしかないんだよ」

「そうかな……」

「……そうだよ、きっと」

彼女ーー百夜にしてはめずらしく、そう、哀しそうな声で呟いた。





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