28:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:15:00.32 ID:M4jexkrI0
「ごめんね。それは無理なんだ」
「っ、どうして……?」
「おねーちゃんって、あたしの全てだったんだ。あたしが持ってる世界の全てだったんだよ。天才だなんだってみんな言うけど、違うんだよね。あたしはおねーちゃんが好きなこと、得意なことを真似してただけの人間なんだ。だから、もうからっぽなんだ。死にぞこないのゾンビみたいなものなんだよ」
「そんなことっ」
「あるよ。絶望ってきっと、こういうことを言うんだなって……おねーちゃんが手の届かない世界にいったって知った時に思った。それでさ、この絶望が残していった染みは、もうあたしが死ぬまで消えない。それが綺麗な思い出も言葉も全部汚していっちゃうんだ。だから……」
「だから……?」
「もう、あたしなんか全部消えちゃえばいいんだ。そう思うから……ごめんね」
「日菜ちゃんっ!?」
透明な壁に背を向けたように、千聖ちゃんに背を向けた。そして走り出す。後ろからは私を、あたしを呼び止める声と追いかけてくる足音が聞こえるから、振り返らず、一目散にあたしは私を引きずって走る。
走りながら、頭の中には今まで偽りの氷川紗夜で押し止めていた氷川日菜の気持ちが溢れかえる。
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