21:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:10:32.58 ID:M4jexkrI0
おねーちゃんがギターに触らなくなったのに気付いたのは、高校二年生の時だった。
「どうしたの?」と聞いても、何も答えてくれなかった。ただ暗い顔であたしを一瞥して、それから部屋に籠ることが多くなった。
あたしはまた考えた。どうすればおねーちゃんが元気になってくれるんだろう、また笑ってくれるようになるんだろう。
その答えは出なかったから、変わらずにギターは弾き続けることにした。
おねーちゃんが「私のことよりも自分の心配をしなさい」と言ってくれたんだから、ギターで、パスパレで天下をとればいいんだと思った。
パスパレのみんなは面白かった。陰口を叩かれなかったのは初めてだったし、おっちょこちょいな彩ちゃん、いろんな難しいことを考えてる千聖ちゃん、無邪気でいつも笑顔のイヴちゃん、真面目でしっかりしてる麻弥ちゃんと一緒にいるのは楽しかった。
けれど、そんなあたしとは反対に、おねーちゃんは日に日に塞ぎ込んでいった。
だからあたしはもっともっと頑張ろうと思った。あたしがお日様みたいに輝けば、きっとおねーちゃんだって笑ってくれると思った。ただただ愚かしく、そう思い続けていた。
そして二十歳の時。パスパレがレコード大賞を受賞した日に、おねーちゃんはビルの屋上から、遠い世界へ飛んでいった。
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