だいたいなんでも解決してくれる杏ちゃん小品集
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76: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:26:02.25 ID:p8Id/7Jt0
 木製の二つ折り将棋盤をテーブルに開き、駒箱を逆さにする。巴は大橋流の手順で、杏は順番は関係なしに目についたところから無造作に駒を並べていった。

「先後はどうしようかの?」と巴が云う。

 一般的には強い方が後手を持つものだが、杏が将棋を指している姿を見たことはなく、その実力は未知数だ。また、将棋指しの自称強い、弱いほど当てにならないものはない。

「振り駒でいいんじゃない?」

 杏がこともなげに答える。巴は、「うむ」と声を出し、自軍の歩を五枚取って盤に中央に放った。歩が一枚、と金が四枚表、という結果になった。

「そっちの先手じゃ」

「うん。じゃ、お願いします」

 杏が小さく礼をし、ぼんやりと盤面を眺める。三十秒ほどそうしたあと、おもむろに腕を伸ばし、角道を開けた。十人中六人か七人はそうする、ごく普通の初手だ。
 杏ならば、いきなり意表を突くような手を指してもおかしくはない、と身構えていた巴は、ほっとしたような落胆したような、不思議な気分だった。


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