72: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 20:20:09.46 ID:p8Id/7Jt0
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巴は将棋を趣味としている。それは父親の影響だった。
任侠団体と将棋は古来より関わりが深い、というのが関係しているかは知らないが、巴の父親は大の将棋好きで、アマチュアとしてはそれなりの指し手でもあった。あるとき彼は、戯れにまだ幼い娘に駒の動かし方を教えた。
女児である。もし興味を持たないようなら仕方ない――と、ものは試し程度のつもりだったが、意外にも巴はこれに夢中になった。
彼は喜んで将棋の手ほどきをし、娘からせがまれれば無理をしてでも時間を作って相手をした。
家に出入りする若い衆たちも多くは将棋の心得があり、巴が相手に不自由することはなかった。
そうして、巴はぐんぐんと棋力を高めていった。小中学校にも将棋を嗜む同級生はいたが、到底巴の相手になるものではなかった。
父親には何百回負けたかわからない。しかし何年もかけて挑み続けるうちに、やがてハンデが大駒落ちから飛車落ちに、飛車落ちから角落ちに、そして香落ちになり、ついには平手でも勝負になるようになった。
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