ダンガンロンパSS雑談スレ★12-SS速報VIP

ダンガンロンパSS雑談スレ★12

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143:名無しNIPPER
2019/01/26(土) 13:12:02.09 ID:5Jz++lhs0
「イメージできる？　敵前逃亡をして国へ逃げ帰った兵士をどこのお人好しが温かく迎え入れるの？　大東亜は日々強大で凶悪な敵と向かい合っているの。戦う牙をなくした国民に――」
　そこで真夜が力任せに千絵を放り投げた。千絵は前傾姿勢で宙を舞って元の席、つまり未来の眼前の机に叩きつけられた。弾みで未来も机ごと床に倒れ込む。

「――生きる資格はない。そう思いませんか、飛田さん」
　体を起こした未来は呆然と真夜を見詰める。前で蹲る千絵の首輪、その電子音が更に甲高くなっていた。

「待てよ、待てって言ってんだろババァ！」
　遂に麻里乃が僅かな可能性に縋るべく教壇に駆け出した――が、くららと晴美に二人がかりで拘束される。

「離せよ、くらら！　晴美！　千絵がっ！」
「あいつらにつっかかるのはやべぇって！」
「落ち着いて、麻里乃！」
　くららと晴美が懸命にしがみ付くも、麻里乃の膂力は相当なもので、二人がかりでも振り回されている。晴美は病弱なのでその事もあるのだろうけれど。

「くそっ、千絵！」
　麻里乃の悲愴な叫びが埃臭い部屋を駆け巡る。千絵は最早首輪には拘泥せず、痛む太股を両手で圧迫しながら立ち上がり――何と再び鉛筆を手に真夜を睨み付けた。

「佐伯さん！」
　反射的に千絵の肩に手を伸ばす。震える肩から繋がった首が未来のほうを向き、何とその目から涙が流れていた。それはきっと、親しい人以外は決して見てはいけない千絵の剥き出しの弱々しい部分で。

「ねえ。あたし、何か悪い事したかな？　間違っているかな？　どうして……」
「佐伯さん……」
　気の毒だがかけるべき言葉が見付からない。今さっき、術なく最愛の恩師を失った無力感を実感しているのだ。その姿が網膜に残っているうちに第二の惨劇、どう止める術があるというのか。情けなくてたまらない。大人ならば何か変えられるかも、とは思わないが、それでも自分の若さが憎かった。政府の人間はそれ以上に憎いけれど。

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