【艦これ】阿武隈「北上さんなんて、大っ嫌いなんだから!」
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◆axPwtNeSoU
[saga]
2018/12/19(水) 00:56:02.43 ID:ER7oh7KA0
その頃、演習水域では。
「こ、こんなところで……! 傾斜復元しないと……!」
「そんな攻撃、蚊に刺されたような物だ! まだだ……まだこの程度で、この武蔵は……沈まんぞ!」
大和と武蔵が必死に反撃を試みる。
バランスを崩しながらも、辛うじて無事だった副砲を大和が斉射し、武蔵が右の主砲を放つ。
だが――当たらない。
至近弾による水面のうねりを足場にし、主砲による水柱をかいくぐり、合流を果たした北上と大井は単縦陣でジグザグに航跡を描きながら二人の大和型に襲いかかっていく。
艦娘の航行はよく水上スケートに喩えられるが、北上と大井の動きはまるでスキーのモーグル競技。
荒れ狂う水面の反動を膝のクッションで吸収し、跳ね上がろうとする主機の動きを強引にねじ伏せ肉薄していく。
それはまるで、傷ついた二頭の鯨に襲いかかる、つがいの鯱。
圧倒的だったはずの射程の差を一気に食らい尽くし、急激に相互の距離を詰めていく。
「うふふ、私、砲雷撃戦て聞くと、燃えちゃいます!」
大井が両手に装備した主砲を交互に放つ。
装備しているのは20.3cm・2号連装砲。普通なら重巡以上が使うべき装備。通常の軽巡なら両手でも扱える代物ではない。
それを片手に一基ずつ、両手で4門の砲口から火を吐きながら大和に向かって猛撃する。
「……海の藻屑となりなさいな!」
大和の残った半身が朱に染まり、主機と砲塔が完全に動きを止める。
「……大井っちー、それじゃ完全に悪役だよー。これ演習演習」
北上が苦笑しながら大井と分かれて旋回し、武蔵に向かって主機を駆る。
態勢を崩しながらも、武蔵のその目は戦意を失ってはいない。
「くっ、いいぞ、当ててこい! 私はここだ!」
武蔵が吠える。
「……上等」
北上の頬に笑みが浮かぶ。
「……けど武蔵っち、こうされたら撃てるかな?」
ジグザグに航行しながらも真っ直ぐ武蔵に向かっていた北上の姿が急激に右に流れる。
それを狙おうと身体をひねり、砲塔を旋回させようとした武蔵の眼が、大きく見開かれた。
主砲の狙う北上のさらに後方。そこには完全に動きの止まった僚艦、大和の姿。
狙いを外せば――大和に当たる。
「くっ……!」
武蔵は一瞬歯を食いしばり……観念したように目を閉じて、身体の力を抜いた。
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