【艦これ】阿武隈「北上さんなんて、大っ嫌いなんだから!」
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◆axPwtNeSoU
[saga]
2018/12/20(木) 15:24:27.71 ID:dKCyvHSA0
――――
――
「何、やってんのよっ!」
何度も、殴られる。
「かかって、来なさいよっ!」
倒れては、引き起こされ。
「やり返して、来なさいよっ!」
立ち上がっては、また殴られる。
制服は泥と雨水でまだらに染まり、お下げの片方はとうに解けてしまっている。草の切れ端や小石混じりの土が頬と言わず身体と言わずあちこちにへばり付いて酷いありさまだ。
しかし北上は、その痛みや衝撃を、どこか遠くを見るような冷めた感覚で受け止め続けていた。
……思えば北上は、この場に阿武隈が現れた時――心のどこかで、阿武隈にまたしても期待……いや、依存しかけていたのだろう。
ひょっとしたら阿武隈ならば、どうにかして自分を救ってくれるのではないかと。
そこまではいかずとも、阿武隈ならば、自分の気持ちを汲んでくれて、いつかはどうにか、自分を許してくれるのではないかと。
いつかはまた……元のように話せるようになるのではないかと。
――そんな都合のいいこと、起こるはずが無いのに。
――あまりの自分の度し難さに、吐き気よりも先に薄笑いがこみ上げてくる。
「……何へらへら笑ってんのよ」
阿武隈の怒りはおさまらない。まだおさまっていない。
ならば……立たなくては。
「……何でやられっぱなしなのよ。何で殴り返して来ないのよ……」
立ち上がるのはこれで何度目だったろうか。工廠の壁に手をついて立ち上がり、ふらつく足に力を込める。
「そりゃ、だって、さ……」
手の甲で口元を拭えば、ぬるりとした鼻血の感触。
「――これくらい、されても当然だって思うしさ」
「ばっ……!」
阿武隈の顔が青ざめた。小さな拳を握り締め、わなわなと震える。
「馬っ鹿に……すんなあっ!!」
阿武隈の拳が頬に突き刺さり、北上は後ろに吹き飛ばされた。
よろめきながら数歩ほどたたらを踏んで……結局踏みとどまれず、水溜まりにばしゃりと尻餅をつく。
殴られ続けた痛みよりも、スカートや下着に染み込む泥水の冷たい感触が不快だった。
前方では、拳を振り切った体勢のまま、ふーっ、ふーっと毛を逆立てた猫のような怒りの形相で、阿武隈が肩を大きく上下させている。
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