3: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/12/09(日) 13:00:33.13 ID:fZLSzMfRo
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ここだけの話、アタシがシキちゃんとデュオを組むと聞かされた最初の瞬間は、
プロデューサーの正気を疑ったんだよね。
テキトーなフレちゃんに、さらに輪をかけてテキトーな一ノ瀬志希ちゃん。
プロデューサーの胃が穴だらけになって網になっちゃうんじゃないか、と心配になったよ。
それに、アタシからみたシキちゃんのファースト・インプレッション、
今から考えるとそんな良くなかった。
シキちゃんったら、約束の時間に、約束の部屋には居たんだけど、居眠りしてて。
フレちゃんが『おつかれかなー』と思って肩を揺すったら、がばっ! って起きて、
いきなりアタシのうなじに顔を埋めてクンカクンカスーハースーハー。
さすがに抗議したら、シキちゃんは、
『お互いの匂いをかぎ合うのがアメリカ流のあいさつなんだよー』と悪びれもなく。
犬猫じゃないんだから。フレちゃんがおフランス生まれと知ってのハッタリか。
アタシは、起き抜けシキちゃんの乾燥したくちびるにリップクリームを塗ってあげた。
パリジェンヌ流のあいさつを返してあげよ――なんて言って。ハッタリには、ハッタリがえし。
あたしたちの横で、プロデューサーが頭を抱えている。
初対面で、気づいちゃったね。アタシとシキちゃん、似てるって――どこが?
ホントウの自分をなかなか曝さず、ハッタリで混ぜっ返して距離を測っていくタイプってところ。
だからこそデュオを組むのは不安になった。
プロデューサーが胃潰瘍を起こさないか――も、あったけど。もっと根底的なモノがあった。
アイドル界で似た者同士がユニットを組んだら、キャラかぶりを起こしてしまう。
だいじょうぶかなぁ。まぁ、外見がぜんぜん違うから、なんとかなるかなぁ。
それでもアタシとシキちゃんは、レイジーレイジーというユニット名を拝領して、
すぐに曲ももらって、活動開始となった。
わーお、アタシたち、相当期待されてる――なんてシキちゃんと笑いあった。
アタシと組んでから、シキちゃんの奇行はエスカレートしていった。
ちょっと可愛い女の子がいると、すぐ忍び寄ってクンカクンカとセクハラする。
それだけならまだしも、レッスン前によく失踪した――まぁシキちゃんがギフテッド? なおかげで、
すぐに失踪ぶんの遅れを取り戻してくれてたから、致命的にはならなかったけど。
そうやって、シキちゃんはプロデューサーやトレーナーさんに叱られる。
アタシはそれを横でフォローしてあげる。そんな位置関係ができあがりつつあった。
コレ、シキちゃんが仕掛けたアタシとの差別化? と思うのは、アタシの自意識過剰だろうか。
横目で何度も見ているうちに気づいたけど、叱られてるときのシキちゃんは、とっても嬉しそうだ。
だから反省の色が見えない、って思われて、よく追加でお灸をすえられてた。
ナニがそんなに嬉しいんだろう。
気になったアタシは、ある日シキちゃんをおしりペンペンした。
知ってる? フランスでも折檻の定番はおしりペンペンなんだよ。
それが悲喜劇の始まりだった。
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