【シャニマスSS】甜花「シンデレラと」夏葉「サンドリヨン」
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35: ◆/rHuADhITI[saga]
2018/12/05(水) 00:11:13.59 ID:eg1fP+qa0

その後、どうやって家に帰ったのかは覚えていない。

午後の練習を終えてから、プロデューサーさんに事務所まで送ってもらった。

そういった事実は思い出せるけど、その繋がりがおぼろげで希薄になっている。

たった今ベッドに転がって、ようやく現実感と胸の痛みが戻ってきたところだった。

甜花「……やめといた方が、良いのかな……」

演技における技術と経験の差は、もちろん感じている。

でもそれ以上に、心の面での隔たりが深く横たわっていた。

夏葉さんの言うことは正しい。

それだけに、よく突き刺さる。

何のために舞台に立って、その先の何を目指すのか。

分からない。

甜花(そもそもアイドルだって、何のためにやってるんだろう……)

始めた理由は、なーちゃんに言われたから。

続いている理由は、楽しいから。

その先は、やっぱり分からない。

トップアイドルになりたい気持ちはあるけど、それだって憧れの域を出ない。

オリンピック選手だとか、ゲームの中のヒーローヒロインと同列のもの。

もっと大仰に言えば、空に浮かぶ星とか月みたいなもの。

自分と地続きの物だと思えないから、目指す姿をそもそも想像できない。

甜花「……分からないづくし、だね……」

気が滅入る。

こういう時、普段はどうやって気を紛らわしていたのだろう。

ゲームとかネットサーフィン……という気分にもなれない。

甜花「……あれ、着信……?」

ディスプレイに、『なーちゃん』と表示されていた。

そこで、一人で思い悩む経験など、まるで無かった事に思い至る。

思い返してみれば、辛い時はいつでも、励ましてくれる人が居てくれたのだ。

だから今のこの辛さは、アイドルになった事での初めてなのだろう。


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