62: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/23(日) 21:04:23.58 ID:l63Jdi8N0
「仁奈ちゃんのママにスタジオまで来てもらうのはどうかな?」
プロデューサーから息を呑む音が聞こえた。呆れているのかもしれない。
仁奈ちゃんは大きく目を見開いてあたしを見ている。
「……仁奈のママにサプライズで出演してもらうってことか?」
「そういうこと」
「で、でも……ママはお仕事が」
震えながら首を振る仁奈ちゃんに、しゃがんで目線を合わす。
「プロデューサーやあたしが電話したって引き受けてくれないかもしれないけどさ、仁奈ちゃんが真剣にお願いしたらお仕事もお休みして来てくれるかもしれないよ」
ドクン、ドクン。
「仁奈ちゃんがいやだって言うならもちろんしなくていいよ。でも、家族でも言ってみないとわからないことって、きっとあるよー。もしだめだったら、また別のアイディアを出せばいいだけだし。あたしもいっしょに考えるからさ」
ドクン、ドクン、ドクン。
どれくらい時間が経っただろうか。
仁奈ちゃんは祈るようにぎゅっと手を結び、ゆっくりと口を開いた。
「ママの気持ちになるですよ」
その口の動きに既視感がある。
ライブ前。ファンの声と重なって聞き取れなかった、あの言葉。
その言葉の真意はわからない。
もしかしたら、大好きなママの気持ちになることで勇気をもらっているのかもしれない。
「仁奈、お願いしてみるですよ。お仕事たいへんだと思うですけど来てほしいって、言ってみるでごぜーます」
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