一ノ瀬志希「ママの気持ちになるですよ」
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2: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/03(月) 17:44:41.36 ID:HUwosoqi0

ショウノウ臭、ジャコウ臭、花香、ハッカ臭、エーテル臭、刺激臭、腐敗臭。

アームアって先生は「におい」ってたった3文字を、これだけ分類してたりする。

辞書をパラパラめくってみると、「匂い」と書けば好ましい香りのことを指し、「臭い」と書けば好ましくない香りのことを指す、なんて書かれてたり。
化粧品会社が加齢臭なんて新しい「におい」を発見してみたり。
どうやら人類が誕生してから付き合い続けている「におい」ってやつには、なかなかに奥が深いものらしい。
もしかしたら、あたしが大人になったときにはストレス臭、なんてのもあったりするのかも。

そんな取り留めのないことを思いついたのは、あたしの体を揺するものからにおいがしたからだ。


「起きなさい、志希」


このにおいのことは、もちろん知っている。
きれいで、優しくて、こわいときもあるけど、あたたかい。
どんな偉大な学者にだって分類できっこない、あたしの、居場所のにおいだ。

瞼を開けると、ママの優しい顔があたしを見つめていた。
そして……むむ。なにやらおいしそーな香りがする。
ハスハス。これは──。

「カレーライス」
 
正解、とママはおかしそうに笑う。

「さっき出来上がったばっかりよ。まったく、食い意地はっちゃって」

「カレーのにおいで起きたわけじゃないよ」

はいはい、とママは軽くあたしの頭を撫でたあと、カレーが置かれているテーブルの椅子に座った。
ほんとに違うのになー。
そんなことを考えながらあたしも椅子に座ろうとすると、テーブルの上にお皿がふたつしか置かれていないことに気づいた。




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