36: ◆IULkuZ.Noal.[saga]
2018/12/23(日) 00:48:32.94 ID:V6ahP/vyO
【#8】晴天
(曇天も突き抜ければ晴天だ)
猿王は友の待つ場所を目指して空を駆ける。
眼前に広がる澄み切った世界は、鬱屈とした地上の空気を一切寄せ付けない。
焦燥と不安は掻き消されはしないが、慰めにはなった。
(これで三度目。次こそは必ず。待っていろ、友よ)
迷いを振り切るように速度を上げる。
だが、それでも付きまとう何かがあった。
敵意に満ちた友の声、混じり気のない殺意に満ちた炎。己のことさえ認識出来ぬ程に濁った魂。
嘗ての高潔な輝きは失われ、そこには暗澹とした虚が広がるだけだった。
何もかもに絶望したように、何かに塗り潰されたかのように。
(友よ、何故だ)
何故、もっと早く呼んでくれなかったのだ。そう思わずにはいられなかった。
自己が定まっていない不安定な状態では、幾ら助けたくとも助けられない。
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