19: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 21:53:53.81 ID:4QLiHviq0
俺はこのみさんに喰らいつくように喚く。
その様をすぐに歌織さんが間に割って入って止められてしまう。
そこで俺もハッと我に返る。
20: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 21:55:35.86 ID:4QLiHviq0
このみさんは自分の喉元を指差しながら
困ったように眉をハの字にして笑ってみせてくれた。
21: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 21:57:39.47 ID:4QLiHviq0
「いや、何も本当にある記憶かどうかも決まったわけじゃないわよ」
22: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 21:58:19.01 ID:4QLiHviq0
口をついて出たこの言葉を聞いた瞬間、
部屋に居た全員が脳に電撃を喰らったような衝撃を受ける。
23: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 21:58:55.89 ID:4QLiHviq0
風花さんが落ち着かない様子で息を取り乱す歌織さんを支える。
そうしているが、風花さんも取り乱していているのが分かる。
24: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 22:01:19.54 ID:4QLiHviq0
初めて出会った日のことも、
初めてオーディションに合格した日も
25: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 22:02:04.41 ID:4QLiHviq0
レッスンで何か失敗してちょっと凹んでいたことも、
何かのレッスンで褒められて喜んでいたことも、
26: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 22:02:45.19 ID:4QLiHviq0
その声が思い出せない。
その笑顔が思い出せない。
27: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 22:04:20.66 ID:4QLiHviq0
俺は……何かとても大切なものを亡くしたことだけが分かっていて、
思い出せないのも悔しくて、涙が止まらなかった。
ずっと忘れないようにしていたはずだったのに。
28: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 22:05:06.30 ID:4QLiHviq0
あの会議を終えてから俺はあてもなく外を歩いていた。
じめじめと蒸す湿気の中、傘をさして独り歩く。
29: ◆BAS9sRqc3g[sage saga]
2018/11/26(月) 22:06:09.22 ID:4QLiHviq0
ひたすらに手に書いた文字を見つめながら歩いていたが、
信号で立ち止まった時、横断歩道の先にある公園を見つけた。
その時、会議室で一瞬だけ思い出した映像がもう一度だけ蘇る。
48Res/21.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20