【モバマス】時子「30mmの彼方から」
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40: ◆Ava4NvYPnY[saga sage]
2018/11/03(土) 19:47:16.34 ID:1iL2fWn50
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初めてハイヒールを履いた日のことは、鮮明に覚えている。

僅か12歳の頃だ。童話に出てくるような、赤い靴だった。

その頃から背の高かった私は、当時にしては高すぎる7cmのヒールを履いて、社交界に飛び出したのだ。

私は、快く世界に迎えられた。

今までに培った教養が、技能が、趣向が、潤滑剤となって人々の心にしみこんでいった。

私が財前の娘として表に出ることで、必要なこともさらに増えた。

美しく歩くこと。

美しく話すこと。

美しく笑うこと。

美しく泣くこと。

美しく在ること。

どれも難しいことではなかった。

周りには、それができる、それをさせてくれる本物ばかりだった。

7cm背伸びして見えた世界は、あまりにも煌びやかで私の心をくすぐったのだ。

だけど。


その世界を覗くために背伸びをしなければならなかった私は、果たして本物だったのだろうか。

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