荒木比奈のジュブナイル
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13: ◆U.8lOt6xMsuG[sage]
2018/10/19(金) 00:10:23.44 ID:TYKVB7XU0

先輩はどうやら、僕が比奈の引退が近づくにつれて気を張り詰めすぎているんじゃないと思い、少しくらいリラックスしろよという意味で缶コーヒーと、後で食事でも奢ろうとしていたらしい

そして、屋外の自販機コーナーへ向かうと、秋が近づき寒くなっていることに気がついたらしい。そして、ホットの方が良いかもしれないと思ったらしい。

そして買ってきて、夏までのように投げてしまったらしい。うっかりと。ホットなのを忘れて、うっかりと

とんでもなく熱かった。

「ごめんな……」

「いやもう気にしてないですよ……いただきます、ありがとうございます」

どうであれ、気遣いは痛み入る。いつも飲んでるやつよりも甘いコーヒー。先輩がよく飲んでいるものだった

「……俺はよ、嬉しいことに担当アイドルが引退するって経験をまだしたことはないからな」

先輩が僕に語りかける。先輩は先輩で缶コーヒーを買っていて、それを飲んでいる。苦虫をかみつぶしたような顔をした。それから、自分の缶と僕の缶を見比べた。「渡す方間違えた」という顔が語っていた

「だから、お前がどんなことに悩んでいて、どんなことを考えているかわからねぇ、あっつ、何これあっつ、苦っ、……話を聞いたり、飯奢るくらいなぐらいしか出来ねぇからな、だから、まぁ、その……先輩面させろ!」

「なんですかもう、恥ずかしくなるなら言わなきゃ良いじゃないですか」

「うっせ、うっせぇ!」

不器用な人だな、相も変わらず。こういうところが憎めないけれど。この人のちょっと抜けた感じに、これまで何度も救われた

「……ありがとうございます、でも、俺はもう決意してますから、心配しないでください。」

悩んでた。逃げたかった。でも、それはもう過去形だ。比奈がみんなに胸を張った終わり方を迎えられるように、比奈と並んでゴールテープを切れるように、僕はもう決意と覚悟をしている

「僕はもう、大丈夫ですから」

きっと、比奈と同じようになれているから。

「……そうかよ、なんだよ、先輩面出来ねぇじゃねぇか」

恥ずかしそうに、先輩が言う。コーヒーが熱くてまだ飲めないのか、フーフーと息を吹きかけていた。猫舌なら、なんで冷たい方にしなかったのだろう(自分用に買って、間違えて僕に投げた方もホットだし)

僕はそれを横目に、飲み慣れない甘さを口に含んでいく。冷めてない熱が、体に染み渡った。

先輩とこの後ご飯に行った。奢るぞ、どこへ行きたいかと訊かれたので、親しんだラーメン屋だと応えた。もっと高いところを選べ、と怒られた




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