8: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:15:07.20 ID:eARP+2sV0
車を走らせ続けて何時間か経過する。誘拐されているとも知らずに爆睡しているモカに現在地を知る術はない。
男(誘拐はひとまず成功したか・・・あとは身代金を手に入れれば・・・)
モカ「ねえおじさん、あたしお腹すいた〜」
9: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:15:49.43 ID:eARP+2sV0
指定のものと男が買った缶コーヒーをカゴに入れ、会計を済ませる。
店員「合計1386円になります」
男「・・・」
10: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:17:03.65 ID:eARP+2sV0
車に乗り、しばらく走っていると海沿いに出た。風が車の窓の隙間から入り込んでくる。
モカ「気持ちいいね〜」
男「・・・ああそうだな」
11: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:17:51.03 ID:eARP+2sV0
その時、男の携帯から音が鳴る。男は路肩に車を止めた。
男「はい、もしもし。・・・ああ、モカちゃんのお母さんですか」
モカの母『娘は無事なんですか!?声を聞かせてください!』
12: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:18:43.10 ID:eARP+2sV0
男「は〜・・・。もうダメだ。居場所がバレちまった・・・」
モカ「おじさん、だいじょーぶー?」
陽が傾き始めた海沿いで、堤防に座って二人は話していた。
13: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:19:38.93 ID:eARP+2sV0
モカは海を見ながら餡パンを頬張る。目の前には九十九里浜の荘厳な風景が広がっていた。夕焼けが反射した、オレンジ色の海。きらきらと橙色に光輝く水面が、夕空の混ざり合い、溶け込んでいる。
モカ「んー、景色を見ながらのパン・・・良いね〜。幸せ〜」
男「それなら良かった。幸せ、か・・・。ーーモカちゃんは、リストラって知ってるかい?」
14: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:20:29.22 ID:eARP+2sV0
男「妻とは離婚してしまうし、子供には新しい良いお父さんが出来たって言うし・・・。もう、俺がこの世に存在する意味なんて何一つ無いんだよ」
モカ「・・・ふーん」
男「モカちゃんは、人が泣く理由って知ってるかい?」
15: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:22:21.30 ID:eARP+2sV0
モカ「・・・おじさんの話・・・あたしはよく分かんないけど・・・」
モカは立ち上がり、男の方に振り向く。
モカ「おじさんはパンをおごってくれたし、今だって自分の分のパンを分けてくれたし。今あたしのことを誘拐してるわけだけど・・・それでも、おじさんは良い人だよ」
16: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:23:13.85 ID:eARP+2sV0
男の目から、雫が一つ、頬を伝った。
嗚咽を漏らしながら、とめどなく溢れる涙を手の甲で拭い続ける。
頭を下げて、子供のように泣きじゃくった。
17: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:24:58.79 ID:eARP+2sV0
男はモカを乗せ、車を走らせた。数時間かけて、家まで送り届ける。あともう少しで家に着くところだ。
男「ごめんな、モカちゃん。今日はおじさんのせいで大変な一日になってしまったな」
18: ◆hvVUYTmsCIUZ[saga]
2018/09/03(月) 00:25:39.61 ID:eARP+2sV0
男「あの・・・モカちゃんのお母さん。この度はすみませんでした」
男「土下座しろと言われれば頭を地面に擦り付けますし、警察を呼ぶのなら、私は逃げたりせずにちゃんと罪を償います。どうぞ、お好きなようにーー」
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