丹生谷「勇太をなんとしてでも独占したい!2」
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82: ◆pkD6GEA.uY[saga]
2018/08/29(水) 21:54:55.38 ID:YDitP8hM0
丹生谷......!
俺はそのぶちまけられた本音に声も出ず、
しがみついた胸の中で怒鳴って泣いている丹生谷を目の当たりに、腕に力も入らない。
初めて気づいた。その気持ち。
ああ、あのときそうだったな、と気付いた途端、彼女の罪悪感で心に剣が刺さり傷跡が赤く広がる。
本気の罵声を言い終わると疲れたのか丹生谷は俺の胸の中で嗚咽を漏らすだけで喋らなくなった。
丹生谷の顔と頭の真っ赤な熱と、涙で湿らせた胸が温度を分からなくさせる。
その異常事態に胸の鼓動が最高潮に鳴る。
丹生谷から落ちたしずくが地面に模様をつくり、服の上からも大粒を垂らしていく。
そんな丹生谷を抱きしめる。いや、抱きしめるだけしかできなかった。
愛なのか。怒りなのか。
俺のさっきのドキドキという意味の正体を丹生谷を見ることで確かめながら。
憐れみと罪悪感とそれと.......。裏切りは悪い。
俺がここまで連れてきたという罪悪感が、俺も薄々分かって六花を見捨てたことを思い出し、
今までの優しさの基底に反し、今の丹生谷を地面に突き放す、
そのような気の迷いを、愛の優しさの優先度で封じ込めた。
泣いて小刻みに震える丹生谷を胸に抱いて、でもどうしようもない気持ちに顔が虚ろになる。
憐れむしかできない俺に、撫でる勇気はない。
背徳心で鳴る俺の鼓動にいら立つ。このような残酷な気持ちに駆られていく。
俺は泣くこともできずただじっと見つめる。聖人君主であれば丹生谷を悲劇から戻せるのだろうか。
だからそのお詫びに俺の体温を、明日風邪ひくかもわからないぐらい代償を、熱を出して丹生谷の心の氷を溶かす。
丹生谷と付き合ってしまったという罪悪感と、
丹生谷と付き合っているという......そう。恋心によって。



その恋心は思っていたよりなにか寂しく冷たい。
うずくまっている胸の中から小さく声がした。
勇太「ごめん」
丹生谷「......///」ぽとぽと
勇太「気づいてやれなくて、ごめん」
丹生谷「......///」ぽとぽと
勇太「優しくして、ごめん」
丹生谷「......///」ぽとぽと
勇太「......///」
丹生谷「......///」ぐすっぐすっ ずーずー
勇太「......///」
丹生谷「......///」ぽとぽと
勇太「......///」
丹生谷「とがしくん......。ごめんね」
勇太「......」
丹生谷「ドン引きした......?」
勇太「ううん。ここまで辛い思いさせてゴメンな」
丹生谷「ワガママだよね。これが私だから......」
勇太「丹生谷の素直な気持ちが聞けて嬉しかった」
丹生谷「いやなの......。優しい。優しすぎる。でも、嬉しい」
勇太「すまん。俺こそ悪かった」
丹生谷「......」
勇太「六花には本当悪いと思ってる。処刑行きだよな俺。なんで彼女を裏切るまねをしたのか。
真面目にあいつがいるんだから、他の女性とこうするんじゃなかった。当たり前だよな。
いちゃいちゃしちゃいけないよな!!俺のせいだ。今度からやっぱり六花の人とは絶対」
丹生谷「やめて......!......なんとなく」
勇太「......。もっと優しくしなかったら、よかったはずなのに」
丹生谷「そうよ。富樫君バカよ。やってほしくなかった......」
勇太「ごめん......」
丹生谷「でも富樫君じゃないと、優しさってのが分からないの」
勇太「......」
丹生谷「つらかった」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「俺、あのとき丹生谷に言いすぎた。
丹生谷、俺の将来のことを思って言ってくれたんだよな。ごめん」
丹生谷「ううん私も。自分のわがままでたいした意味はなかったの。
あんなに焦らせる気もいらなかったにね。私のせいよ......全部。
小鳥遊さんの悪口言っちゃった。小鳥遊さんに......償えない......!」
勇太「ごめん。本当にごめん」
丹生谷「いいわよ。私の勝手なわがまま」
勇太「でも、悪いのは全部俺だから。
他の異性に抱かれるまで何の危機感も感じなかった俺が悪いんだ。
世界最大のバカだ。だから、俺の責任だから、何も悪くない」
丹生谷「富樫君。そういう優しさが......いや......」
勇太「......。ごめん。......俺も丹生谷の言い方に問題があると思った」
丹生谷「うん。私が悪いの。ごめんなさい」


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