丹生谷「勇太をなんとしてでも独占したい!2」
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109: ◆pkD6GEA.uY[saga]
2018/08/29(水) 23:12:57.09 ID:YDitP8hM0


勇太「......」
丹生谷「......」


夕日が落ちる。
だんだん蒼い夜空が数えられないほどの星々を照らすようになって、
残されたのは夕日の薄く光るオレンジだ。
その色を見ただけで俺の隣の人を思い出し、辛くなる。
ベンチ越しに見る夕日と、見守られたような太陽の温かさも、
そして大きな川の太陽によるきらきらとした反射もなくなりかけていて、憂鬱感と辛さで胸が痛い。
公園の中に街灯が光っていく。
でも、丹生谷にその姿を見せてさらに辛い思いはさせたくない。
丹生谷の香水の香り、すっかり俺の体に馴染んでしまった。
対照に俺の獣臭い匂いなのに隣の丹生谷から漂ってくる。
限りなく嬉しいし、あの夕日を見れば限りなく悲しい。

俺達は来るべき時が怖くて、いよいよ目をそらして地面をただ見つめるだけになってしまった。
時間は非常にも過ぎていく。あれだけ時が経つのが楽しかったのに、今じゃもう。
だから俺は丹生谷の姿を目に焼き付けた。
肉眼が破裂してもいいぐらい、いつまでも記憶に残らせるようじっと見た。
丹生谷の髪の匂いに最初ドキッときた。あのときが懐かしい。
辛すぎて、時間を巻き戻せられたらいいのに。
丹生谷の体、髪も顔も肩も腰も柔らかくて本当に愛おしい。でも感触も忘れてしまうのだろう。
ふと、この色と、鼻筋を見ると、
あのころ、俺の部屋にあるマビノギオンを取ろうと猫を被った丹生谷が畑の広がる広い道路で、
俺の鼻をつんとついて「誰かさんが鈍いからだよ♡」と言われたあの頃を思い出す。
あのとき恋愛するんじゃないかと胸騒ぎした。
今思えば今回のデートも、怒られてもからわれたり、
犬や子供を見る目で慰められたり、とにかくいろいろあった。好きすぎてあげられない。
俺が見ていると丹生谷も俺の顔を見て、その瞳が愛おしいという意味を目の輝きで表していた。
俺達は無為に少ない時間を過ごした。
今日で終わる。この夏。奇跡の時間。



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