17:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:57:46.76 ID:BsXQ9LjA0
電話口の李衣菜ちゃんは、一言目の関西弁がウケたみたいでしばらく笑っていた。それからちょっとムカついた私は標準語でしゃべっている。ちょっとの間、イントネーションが標準語と関西弁の間で揺れていたけど。李衣菜ちゃんは時折聞こえる花火の音に興奮しながら、私といつも通りにロックとか猫とかの話していた。
私は浴衣姿がどうだったか尋ねていない。そもそもすぐに電話をかけたし、多分見ていないと思う。しかも、尋ねるのは自意識過剰みたいで嫌だ。だったら何で送ったんだ、ということになるけど、そこは花火大会の夜の熱に浮かされた、ということにしたい。
花火大会は終わりに近づく。遠くのマイクの声を聴きとるのも慣れてきて、終わりに向けてこれから一気に何発も打ち上げるということが分かった。
「そろそろフィナーレなんだって」
『そうなんだー!』
目を輝かせているのが手に取るようにしてわかる口調で李衣菜ちゃんは言った。最初の一発が打ち上げられ、光の尾が見える。
『……あのさ、みく』
いつもと同じようでいて、落ち着いた声音で李衣菜ちゃんは切り出した。一つ目の小さな光球が炸裂して、夜空に花が咲く。追うように二発目、三発目の光球が空に浮かぶ。
『浴衣、似合ってたよ』
炸裂音が響き始めた。音が重なり合ってどんどん大きくなる。
「……ありがとう」
花火の音と心音がうるさくて、言葉が伝わったかはわからないし、電話の向こうの音も全然聞こえなかった。耳から離して画面を見てみると、通話終了の文字が浮かんでいる。
これだから。私は笑った。李衣菜ちゃんはズルいよ。
視界が滲む。嬉しいからに違いない。
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