倉石「石澤! SからE! そしてXだ!」
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44:名無しNIPPER[saga]
2018/08/27(月) 22:08:48.51 ID:RXNMxkAFo

 才能。


 努力ではどうしようも無い事を人はこう呼ぶ。
 彼女達の事を語る上で、この言葉は避けて通れない。
 人が、彼女達を見る時は、才能に恵まれていると思うのだろう。


 バドミントンの才能。


 身体能力や、反射神経、その他諸々の、バドミントンに関する様々な要素。
 生まれながらにそれに秀でているのは、とても素晴らしい事なのかもしれない。
 才能を活かし、能力を伸ばし、自分の思い描くように、伸び伸びとプレーをするためには。


 ……けれど、それによって失われつつあるものも、ある。


 それは、彼女達の――母娘の、‘普通の’、当たり前の関係。
 家に帰って「ただいま」を言うと、「おかえり」と返ってくる。
 そんな、あえて触れるまでもない、
日常的なやりとりが失われたのは、バドミントンの才能があったから。
 ……いや、違う、そうじゃないな。


 彼女に、あの娘の‘普通の’母親でいる才能が無かったのだ。


 あまりにも大きすぎるバドミントンの才能に、母親としての才能がついてこられなかった。
 簡単に言ってしまえば、そういう事になるのだろう……残念ながら。


 だけど、彼女は娘を愛している。


 だから、彼女は出て行った。


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