28:名無しNIPPER
2018/08/19(日) 15:04:07.64 ID:lrCZX+po0
「好き好き好き好きだーい好き。ネモとずーっと一緒に居たいな♪」
萌え豚に媚びたみたいな仕草と声色でそう言ってきた。
「な、な、な……ぜ、絶対嘘だーっ!!」
「あはははははは! ほんとほんと、ほんとだよー!」
ネモを掴んで黙らせようとしたら、ネモはするりと交わして教室を出て行ってしまった。
「……黒木さん……?」
「ひな……」
田村さんと岡田さんが光の消えた瞳でこっちを見てくる。こえーよ!
私は場の空気にたまらず、ネモを追いかけて教室を飛び出た。
「おいネモ! ちゃんと誤解を解いてから出てけ! 聞いてんのかー!」
「だからほんとだって言ってるでしょ? あっははは!」
ネモは心底楽しそうな笑い声を上げて、走って逃げて行く。
私はいつぞやのマラソンの時のように、ネモの背中を追いかけるために、一つ大きく息を吸った。
「私はなー、絶対そんなこと……」
言わない、と言おうとして、言葉に詰まった。
記憶の片隅で、自分の声が反響したような気がしたから。
……気のせいだ、気のせい。私はネモの事なんぞ……
……嫌いじゃないけどな。
そんなツンデレっぽいセリフを思い浮かべて、なんだかむず痒くて。
そんな気持ちを打ち消すように、私はさらに追う足を早めた。
私とネモの笑い声と足音が廊下に木霊する。初夏のある日のことだった。
終
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