81:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:58:31.13 ID:w6V3e5/y0
ある田舎でのロケのこと。ロケ用のバスが遅れていて、余裕もあったし、歩いてむかうことにしたのだ。
「あっ」
私は目の前にぽとりと落ちた水滴に気づくと、空を見上げた。
太陽が隠れていなかったから気づかなかったが、空はすっかり雲に覆われていた。
プロデューサーさんも空を見上げていた。
「目的地までもう少しだから、持ってほしいんだが」
「私のせいで、降られそうですね……」
「ほたるのせいじゃないが……降られるだろうな」
なんて言っているうちに、またぽつりと一滴。
「今日……降らないってお天気予報で言っていたのに……」
「そうだが……安心しろ」
プロデューサーさんは、鞄から折り畳み傘を取り出した。ボタンを押すと全自動で開くタイプの傘だ。
「抜かりはない」
「流石プロデューサーさん」
感嘆している私に、プロデューサーさんもまんざらではない様子でカバーを外しながら、ボタンを押して。
ポン。っと勢いよく伸びたかと思うと。
傘の軸の部分が止まるべきはずのところで止まらず、そのまま飛んで行った。
傘の部分は開くこともなく、コロコロと脇の茂みに転がっていった。
呆然としていた私とプロデューサーさん。その直後に、遠慮のない土砂降りが降ってきた。私とプロデューサーさんは降られるがまま顔を合わせていたけど。
「……走るぞほたる」
「は……はい……!!」
ロケ現場に着くころにはすっかりずぶ濡れになっていた。
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