白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」
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58:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:19:25.10 ID:w6V3e5/y0



「ありがとう、裕美ちゃん」


「私こそ。あのね、この舞台は私のアイドル人生にとって、最初の一歩になると思ってるんだ。その時にほたるちゃんが居てくれて。本当に嬉しくて」

「……私もだよ。私にとっても、この一歩って、大事になると思ったの。迷惑もかけるかもしれないけど……それでも」

「じゃあ、これって、私たちにとっての、最初の一歩になるんだね」

「うん」


 私の両肩に手を置いた裕美ちゃん。

 その手は緊張で強張っているのが、私にも伝わってくる。そんな手を、私は上から包み込んだ。

 裏口から、関ちゃんプロデューサーが顔を覗かせた。


「じゃあ、始まるぞ」

「うん」


 私は席を立つと、最初にステージに立った。

 みんなが私に注目している。誰だろうと、不思議そうな視線。ドキドキして。声を出して。


「みな――」


 マイクの音が出ていない。小さな会場だけど、ないと不安だ。

 どうかしたのか。マイクの電源を入れ忘れたのか。でもしっかりついている。じゃあなんで。

 会場の一番奥、音声盤を弄っていたスタッフさんが手を挙げてから、次に両手で丸を作った。どうやらそちらのミスのようだ。

 もう一度、声を出した。



「みなさん、初めまして。私、本日の進行役をやらせていただく。白菊ほたるです」




 そう言った私の声は、少しだけ上ずっていた。








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