47: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2018/08/10(金) 00:25:11.41 ID:OipDTOFK0
○
「それで、また私といるために雇ってくれって言ったわけ?」
「……まぁ、そうなる」
「ぷっ、あはは。ばかだなぁ」
不器用な人だ。
「何で笑うんだよ」
「だって、恋人になる、みたいな選択肢だってあったわけでしょ。告白が成功するかどうかはさておき」
「あー……」
「まぁ、なんだっていいけどさ」
言って、前をふらふらと揺れている彼の左腕に抱きついてみる。
「なんだよ。もう」
「……付き合うとか、そういうの。どうかな」
頭の中で用意していた言葉は出てこなくて、代わりに出てきたのはあまりにも不甲斐ない告白の言葉だった。
「どう、ってお前」
塞がっていない右手で彼は自分の頭をぼりぼりと掻く。
「あー、もう!」
ぶん、と彼は左腕を大きく振り、私は腕を離してしまった。
そこへ間髪入れず、腰を抱き寄せられた。
せめてもの抵抗に「終電なくなっちゃいそうだよね」とおどけて言ってやる。
「まだあるし、なくなったらタクシー捕まえればいいよ」
「据え膳」
顔を見上げ、抗議の念を込めてそう言ってやる。
「酔った勢いで、とかそういうの、あんま好きじゃないんだよ」
「酔ってないよ。その証拠にほら。クロスウォーク」
身をよじって、彼の腕を振りほどく。
そしてジャンプ、ステップ、キック。
これらを組み合わせたものであるクロスウォークというステップを何度か踏んでみせる。
「その行動が酔ってるって言ってんの。今日は帰るよ」
強引に握られた手を、握り返す。
お互い耳まで真っ赤に染まっているのは、間違いなくお酒のせいだろう。
おわり
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