30: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2018/08/10(金) 00:16:49.80 ID:OipDTOFK0
○
「はい、バッグ預かるわね。ほら、座って座って」
ぐいぐい手を引かれて、店内に通される。
ぴかぴかに磨き上げられた床や鏡の数々と、これでもかという程に準備された道具たちを見て、本気度が窺えた。
私が座ると同時に、ふんわりカットクロスをかけてくれる。
手際の良さも相変わらずだ。
「久しぶりねー。でも髪、ちゃんとケアしてるのね。凛ちゃんのそういうとこ、大好きよ」
会話というにはあまりに一方的なそれを経て、ようやくカットの内容に関するヒアリングが始まった。
「それで、今日はどんな感じにするの? いつもみたいに伸びた分切ってく感じかしら?」
「あ、えっと。今日はちょっと特殊で……その。ばっさりお願いしたいんですけど」
「きゃー!!」
両手を頬に当てての、絶叫。
いちいちハイテンション過ぎる。
「ボブくらいの長さまで、こう、ばっさりと」
「んー! もったいない気もするけど、こんな一大事件に私を選んでもらえたのが嬉しいわ! お姉さんに任せて!」
櫛とハサミを両手に持って、ばんざいの格好をしているお姉さんだった。
こんな調子でも腕は信頼しているし、このお姉さんに任せて後悔したことなど一度だってない。
だから、今回も「はい。お任せします」と笑って答えた。
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