7: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:29:07.29 ID:seikrJsf0
美優「ぷ、Pさん……」
かろうじて動いた舌を、強引に引っ張って動かす。
ボイストレーニングと同じだ。何ら変わりはない。同じ要領、同じ行動。
だというのに、美優の舌は動かなかった。
8: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:33:53.45 ID:seikrJsf0
美優「なんでですかっ!」
溢れ出した感情は激流のように。
漏れ出した激情は雪崩のように。
美優の舌を動かした。
9: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:37:53.03 ID:seikrJsf0
美優「私がこんな性格だから? 貴方を失望させてしまいましたか? 私じゃダメだったんですか? 何か足りなかったんですか? 何があればよかったんですか? 何が貴方をそうさせてしまったんですか? 私の何が――私が……ダメだったんですね……」
P「……」
……流石にこの独白には、若干Pの内心にも申し訳なさを纏った罪悪感が出てきた。もっと泣き叫んだところで起き上がって「てへへー実は生きてたよん♪ ごめんね美優さん♪」とか言って許してもらう作戦を考えていたのだった。
10: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:41:09.11 ID:seikrJsf0
P(どっ……どうする俺!? なんていうか……後には引けない感じ! このままだと美優さん、何をしでかすかわかったもんじゃ……)
P(し……しかもやべぇ! まだ色々ギミックを用意したままだ! このまま俺がネタバラシしなかったら、美優さんは気付いてしまうんじゃないだろうか……そうなったら、マジでもうどうしようもなくやばいッ!)
美優「Pさんの……卓上……手紙……?」
11: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:43:56.38 ID:seikrJsf0
美優「読む……読みましょう……」
P「……み、みy」
美優「……」ナミダドバー
12: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:48:39.51 ID:seikrJsf0
手紙を抱きかかえるようにして俯く。涙は下る。もう、他の人間は遺書を読むことは出来ないのではないだろうか……涙で滲んでしまって、文字が歪んでいる。
けど、それでいいような気もした。
Pさんは疲れていたのだろう。それが何かはわからない。けれど、何かに対して疲れを感じていたことは確かだ。それが自分かもしれないと思うと……美優は頬の熱を抑えられなかった。
寒風を割いて涙が落ちる。跳ねる宝石のように煌めいて――砕けた。
13: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:49:38.58 ID:seikrJsf0
P「あの、すいません……」
美優「……はい?」
P「ごめんなさい。死んでません……」
14: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:52:14.78 ID:seikrJsf0
美優「だ、だって……体だって冷たくて……」
P「この部屋の冷房、20℃まで下がってますし服の中に保冷剤詰めてます……美優さんが触るであろう左手は重点的に冷たくしたんですけど、後から考えると天井のロープが揺れてるのに体が冷たいのは、時間のつじつまがあっていませんね……」
美優「い、遺書……」
15: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 22:55:45.40 ID:seikrJsf0
美優「カメラはありますか?」
P「いえ、企画立案並びに演者は俺だけです」
美優「……」
16: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 23:01:03.04 ID:seikrJsf0
美優「良かった……良かったです……Pさん、いなくなっちゃうのかと……」
P「いやー20代で死ぬのは勿体ないですよ」
美優「そう……そうですね……ふふ……」
17: ◆V1gN/9sbLo
2018/08/06(月) 23:03:51.02 ID:seikrJsf0
P「なんかめっちゃ迫られて怖かったけど週末に美優さんの洋服を見に行くことで手打ちになったぞ!」
P「さっきのは流石にやりすぎだったな!」
P「次はもうちょっと柔らかいドッキリにするぞ!」
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