76:名無しNIPPER[saga]
2018/08/16(木) 11:42:53.33 ID:Ti5Yp1E40
伊58「……?」
伊8「じゃあ、逆に相対的でない状況ってどういうことだと思う?」
伊58「それは、誰が見ても同じ事ってことでち。客観的な事実のことでち」
伊8「相対的でないことが客観だとするなら、相対はつまり」
伊58「主観……?」
伊8「主観がなければそもそも相対性なんて生まれないよね。ニーチェはだから相対性を破るために主観性をやっつけようとする」
伊58「主観を追いやるってどういうことなのかわからないでち。いまある意識をなくせってこと?」
伊8「ニーチェがどういう風に考えたか手掛かりを得るために『力への意志』から引用してみるね」
「『すべては主観的である』と君たちは言う。けれどもこのことがすでに解釈なのである。『主観』と称されるものは何ら所与の事態ではなく、むしろ、所与の上に捏造してつけ加えられたものであり、所与の背後に挿入されたものである。――――解釈の背後にさらに解釈者を定立することなど、とどのつまり果たして必要であろうか。実はそうしたことがもうすでに、虚構であり仮説である」
伊8「ニーチェが放逐したい主観はあくまで解釈としての主観であって、たとえば今ゴーヤと話しているはっちゃんの生意識は対象ではないんだよ」
伊58「でも解釈された主観ってなにでち」
伊8「たとえば凶悪な犯罪が起きた時、私たちがどういう反応をするか考えて」
伊58「許せないと思うでち」
伊8「うん……うん。そうね。……それで、そう思った後なぜそんなことが起きたか犯人の人物像に迫らない?」
伊58「家庭環境とか借金がどうのこうのとよくニュースでやっている感じの?」
伊8「そう。あれは犯罪事象の裏側に何か確固たる理由である主観を見出そうとしている。これはこういった主観性だからこんな凶悪なことを犯したって」
伊58「凶悪犯罪者が極めて平凡な場合もあることはアイヒマンの件で知っているでち」
伊8「たしかにミルグラムの服従実験は善良な一般人でも残酷な行いをすることを示した点で衝撃的だった。でも、これは権力システムに組み込まれた時という特殊な状況であって、もっとラディカルなニーチェならこうした状況の指定も許さないと思う」
スタンレー・ミルグラム『服従の心理』河出文庫。人が権威ある立場から命令されると、どれくらい人を害せるのかを示した名著。文章は平易で読みやすく、実験も様々なバリエーションが掲載されており、興味深く通読できる。ニーチェより読みやすい。
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