44:名無しNIPPER[sage]
2018/07/27(金) 18:47:46.14 ID:YwSoJMOz0
「……ごめんなさい弘世さん。いま私に電話を変わったとして、状況が状況だけに宮永さんが切りかねないわね」
「まあ、な」
言葉少なめに弘世さんが柔らかい笑顔を浮かべる。
「電話、まだ繋がってるわよね? 伝えてくれないかしら。 『咲はこの場を離れた。少し面と向かって話がしたい』って」
「わかった。言ってみよう」
弘世さんが、かくかくしかじかと説明を始める。
それにしても不甲斐ない。咲は姉がなんと言っているかが聞こえていたわけではないだろうけど、結果として咲の行動でやりようが出てきてしまった。あの子のための行動であの子に心労をかけては本末転倒だ。
「亦野とだな。ああ、さっきの場所だ。わかった、待ってる」
話がついたんだろう。スマホを鞄に戻し、弘世さんがこちらに目を向ける。
「後輩の案内で、三分ほどで来られるそうだ」
「三分……、案内?」
「ん。いや流石に今来た道でそうそう迷わないと思う、いや思いたいんだが出来るだけ一人はつけるようにしてるんだ」
気にかかったのはそこじゃないんだけれど、まあいいや。たぶん訊いても仕方のないことだ。
「なるほど。白糸台部長はいろいろ大変なのね」
「ここで否定できないのが悲しいよ。ああ、でもさっき照のほうから先に電話してきてな」
「先に、というと」
「会見のあとすぐ自分から電話してきたんだよ。『迎えに来て』って、いつもは迷子になってから電話してくるからなぁ」
「へぇ」
弘世さんが嬉々として喋る。それで喜ぶって、保護者かなにかなのかしら……とはもちろん言えない。
そうだ。宮永照が戻る前にこれは聞いておこう。もしかしたら手助けが期待できるかもしれない。
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