6: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:33:05.84 ID:+QmI8LWq0
身体が1.2mの奈落へ吸い寄せられていく。
電車がホームへ、悲痛な叫び声を上げながら迫る。
まゆのために泣いてるのかも、しれませんね……。
7: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:34:05.15 ID:+QmI8LWq0
だが次の瞬間。
身体がやわ、と、ホームへ引き戻された。
抱きしめられてる。まゆは自分の状況を瞬時に分析した。
男性用のパフューム。胸がすくような。
8: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:34:50.17 ID:+QmI8LWq0
・
まゆはアイドルになった。一も二もなく。モデルは辞めた。二つ返事で。
社長がなにか恨み言を言っていた。どうでもいい。どうでもよいことだ。
9: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:36:01.54 ID:+QmI8LWq0
アイドルにも、美人にも見慣れているであろう社員達が、皆まゆの方を見る。
心の底から人生を謳歌しているものは、それがたとえどのような手段であれ、周囲を惹きつける。
まゆは世界に微笑み返す。
10: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:40:14.20 ID:+QmI8LWq0
「だきしめても、いいですかぁ」
その言葉を言い終えるまえに、まゆは相手を抱き締めていた。
罪の香りがする。鼻先を、薄灰色のジャケットに押し付ける。
鼻梁がひくひくと震える。鼓動がおちつく。なにも聞こえない。
11: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:40:43.86 ID:+QmI8LWq0
今日はオフだった。だが、まゆはプロダクションにやってきた。
ただ愛のためにだけ。
ふたりで、リフレッシュルームに入る。
ほかのアイドル達は、まぶしそうな目でまゆを見る。
12: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:41:31.85 ID:+QmI8LWq0
「Pちゃま」
「おはようごぜーますでごぜーますよ!」
「プロデューサーはん…?」
少女たちがプロデューサーに挨拶をする。
13: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:42:22.34 ID:+QmI8LWq0
そういう男が自分を、佐久間まゆをプロデュースしている。
少女としての優越感、女としての自尊心、アイドルとしての期待感、佐久間まゆとしての充足感。まゆのプロデューサーは、それらをいっぺんに満たしてくれる。
だったら、こたえなきゃ。そそがなきゃ、いっぱい。
今度は失敗しない。今度は、しくじらない。これは運命なのだから。
14: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:42:49.21 ID:+QmI8LWq0
・・
レッスンルームで、19歳のトレーナーは自分より3歳ほど下の、アイドルを見ていた。
お互いに新人。はじめは親近感が湧いた。
15: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/07/23(月) 07:46:12.52 ID:+QmI8LWq0
スカウト組としては非常に珍しいタイプ。
通常、スカウト組にはよく言えば精神的余裕、悪く言えば甘さがある。
“自分はプロダクションからお願いされてアイドルになっている”。
その自負は多かれ少なかれ、少女達の向上心を鈍らせる。
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