3:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 17:42:46.37 ID:TXxgAIfuO
私には姉がいました。
その洗礼名をセイラムといいます。
実姉ではなく、ただ先達としての存在であったことから、私が姉と思い慕っていた方です。彼女もまた私のことを、実の妹のように可愛がってくれていました。
セイラムは剛健なひとでした。庭仕事の際、清掃の際、たびたび修道服の袖をまくりあげていた姿を、よく覚えています。行儀が悪いと司祭様から叱られていた様子も、また同じく。
セイラムはオルガンの演奏に優れていました。彼女の気立てがよく表れた明朗な音色に沿って、聖歌をうたった日もあります。
セイラムは料理が得意でした。小斎のときなども、制限された食事さえ、彼女の作るものならば苦ではなくなりました。
少女だったころの私を思い返すと、ほとんど決まってと言っていいほど、セイラムと共に在った日の記憶が掬われます。それくらい、私は彼女の後をついて回っていたのでしょう。
セイラム。貴女の背中を追った私の日々は、幸せでした。私と過ごした貴女の日々は、幸せだったでしょうか。もう確かめるのは難しくなってしまいました。
朝の日差しや、夕の淡い月影にさえ、貴女の不在を強く感じます。
それでも、いままで私に添っていただいた事実はこの胸の底で鮮やかさを保ったまま。
貴女にいただいたものすべてが、この胸で輝いているようです。
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