6:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:13:01.92 ID:eCrKDArS0
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十月の文化祭を目前にひかえ、学校内は準備に余念のない生徒達で連日のようにてんやわんやである。
どのクラスもそわそわと落ち着きなく青春の思い出作りに躍起になろうと浮き足立っている。
それは凛とて例外ではなかった。
むしろ内心では人一倍わくわくしていたが、感情を表に出すのが苦手な凛はどんな風に振る舞えばいいのか分からず、かえって仏頂面が増した。
凛が周囲から不機嫌だと思われやすいのは、物事に真剣になるとつい表情が険しくなってしまうクセのせいもあった。
文化祭直前の、ある放課後のことである。
「あの……」
「ひゃいっ!?」
「あ、いや……なにか手伝おうか?」
「けけけ結構ですっ お気になさらず、どうぞっ」
飾り付けの準備をしていた女子生徒Aに声をかけると、彼女は急に何か用事を思い出したような素振りをして教室を出て行った。
凛はほかに手伝えることはないかと辺りを見渡してみたが、教室にちらほら残って作業している生徒は必死に目を合わせないよう顔を背けている。
そもそも凛のクラスはたこ焼きの模擬店を出すことになっており、準備にそこまで人手が要らないのである。
(何もしないで帰っちゃうのもなんか悪いな……)
にわかに高まったモチベーションのやるかたない思いから、凛は、なんとなく放課後の校内をぶらぶらすることにした。
普段は授業が終わればまっすぐ帰るエリート帰宅部の凛にとって、放課後のざわついた校舎を歩くのは新鮮でわくわくした。
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