14:名無しNIPPER[saga]
2018/07/13(金) 08:18:35.50 ID:eCrKDArS0
当然、凛の噂は卯月の耳にも入ることとなった。
「それ、私も見ました! 血まみれの子が先生を襲ってたところ……」
「えーこわーい」「てかやばくなーい?」
「ね、ね。他に聞いた話だとさ、購買部のカツサンドを買い占めて裏に流してるとかって……」
「やばー」「ねー」「卯月ちゃんも気をつけなよ?」「う、うん」「その不良、1年なんだって?」
「そうそう。名前は渋谷なんとかって言ったっけ」
(え? 渋谷って確か……)
卯月はふいに疑問を覚えたが、すぐに考えるのをやめた。
あまり深く首をつっこみたくないという思いと、今週末に行われるミニライブのために余計な不安を募らせたくないという思いがあった。
ライブと言っても商店街のイベントにサブで出演する程度である。
しかし卯月にとって、あるいは卯月の所属するグループにとっては今回の出演が実質上の解散ライブだった。
外部に向けた告知はまだしていない。そもそも、告知をしたところで人が増えるほど知名度のあるグループでもない。
卯月とて事情のすべてに納得しているわけではないが、それでも最後まで真剣に取り組みたいという気持ちがあった。
健気である。
その日の放課後、卯月は帰宅後いつものようにジャージに着替え、河原へ出かけた。
週に何度か自主的に取り組んでいるジョギングである。
夏も過ぎ、暮れかけた夕日が地平線の彼方を輝かせている。
卯月は寂しい気持ちを押し殺すようにペースを上げて走った。
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