15: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/07/10(火) 00:40:45.01 ID:HZVkJLTW0
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「衣が――」
そう言って女は小首を傾げるようにすると、
コロッケを頬張るプロデューサーとの距離を一歩詰めた。
普段は気丈にセレブらしく、斜に構えている品のある眉が、
今は突然のにわか雨に降られて困った婦女のように、すがるようにして眉尻を下げている。
再び一歩距離を詰める。
千鶴の視線は男の顔、そのある一点へと注がれ揺らぎもしない。
乾いた唇を湿らすために、彼女の赤い舌先が口唇をなぞる。
まるで蛇に睨まれた蛙のように。金縛りにかかったかのように。
男は体を固くすると、食べかけのコロッケを持ったまま沈黙する。
千鶴の細く長い指が、男の肩の上に触れた。
そしてそのまま左右十本の指がジャケットに深い皺を作る。
もはや千鶴の大きく豊かな胸の、
その出っ張り分しか隙間が存在しない距離において、
女は熱に浮かされたような瞳を瞬かせ、
男の肩に体重をかけるようにしてゆっくりと踵を持ち上げると、
口内に溢れる粘膜が下品に千切れる音を隠しもせず――。
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