6: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/07/01(日) 01:33:22.26 ID:2uWkbAhno
※参考資料4-3(つづき)
ダメです……いつまでもこんなことシてたら、本当におかしくなります……。
プロデューサーさんの右足が、革靴の踵で刻まれるリズムが、速くなったり遅くなったりすると、
それに合わせて、森久保の内心もあっちへこっちへフラフラします。
森久保は見えないロープで吊るされて宙ぶらりんで、プロデューサーさんの足先一つで、
ぐわんぐわん体を振り回されてるんです……。
え……? プロデューサーさん、どこへ、行くんですか……?
プロデューサーさんの足が、立ち上がって、もっ、森久保の視界から外れてしまいます……。
立って、そのまま、机から、離れて……どこへ行くんですか、森久保は、ここにいるんですよ?
足音が、遠ざかります。まっすぐ、早歩きです。肌でべたつく汗が、一気に冷えます。
扉の開く音がして、そのまま、プロデューサーさんの気配が感じ取れなくなりました。
う、ウソですよね……森久保を、騙そうったって、そうはいかないんです。
きっと、森久保から見えない所に隠れて、待ち伏せしてるんです。
出て行った瞬間、飛んで火に入る夏の虫です。焼かれて焦がされてしまうんです。
で、でも、もしそうじゃなかったとしたら……?
これ以上、プロデューサーさんと一緒にいたら、森久保はこれ以上おかしくされてしまうんです。
何をされるかは想像もつきませんけど……どんなにおかしくされるかは、分かってしまうんです。
なのに、今、森久保は、おかしくされなかったらどうしよう、とか考えてしまったんです……。
前は、アイドルなんて辞めてしまおうと毎日思ってたのに。
プロデューサーさんが森久保から離れたら、アイドル辞めてしまえるのに。
こんな森久保をかまってくれて、ましてアイドルデビューさせようなんて世話焼き、
プロデューサーさんしかいないんだから……。
じゃあ、もうプロデューサーさんがここに居ない、としたら。
背中が、前のめりに傾きます。
手足が見えない糸に引っ張られて、変な動きしたから、机の荷物が何か落ちて床を叩きます。
森久保は床にへばりついて、主を失ったままの椅子に寄って、机から顔を出します。
「プロデューサー、さんっ」
「やっと自分から出てきてくれたか。嬉しいぞ、森久保」
森久保は机に頭をぶつけました。
あまり勢い良くぶつけて、目の前にちらちら星が散って、プロデューサーさんの顔に重なりました。
頭までジンジンしてしまいます……。
「さぁ、森久保。レッスンだ。今日は新しいコトを教えてあげよう」
「む、むーりぃ……です……」
耳から頭に絡みつく声。手を握られて、森久保の手汗がバレちゃってます……。
「楽しみだろう?」
「ぷ、プロデューサーさん……」
森久保は、訳もわからないのに、
ただ、プロデューサーさんがとても楽しそうに笑うものだから、
首を縦に振ってしまいます。
「森久保。本当に楽しみかな?」
プロデューサーさんは、森久保が声に出すまで、じっと森久保の手を握っていました。
また、森久保のどこかが、おかしくされてしまったんです。
だって、楽しみかどうかも考えられないぐらいドキドキしてるのに、
勝手に首が頷くんです。勝手に喉がしゃべるんです。
こうしてプロデューサーさんに変えられてしまったことが、一つ一つ積み重なって、
森久保のなかから離れなくなるんですけど……これが、プロデュース、なんでしょうか……?
そうだとしたら、森久保は……。
※参考資料4出典
モバP「彼女たちの屈折」
ex14.vip2ch.com
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