4: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/07/01(日) 01:32:14.09 ID:2uWkbAhno
※参考資料4-1
机の下で、プロデューサーさんを見上げて、まともに視線がぶつかったこと。
その瞬間から、色々されるまでのこと。
プロデューサーさんの気配が背筋に走るたびに、それが思い出されて、
頭から離れなくなって……とっても、困ってるんですけど……。
プロデューサーさんは、私の……もっ、森久保の居場所なんて、
探さなくったって最初から分かってるはずなんです。
だって、森久保はあの日から、隠れるときは決まって机の下なんですから……。
森久保が逃げ出して、机に潜り込んで少し経つと、
いつも同じぐらいの時間で、プロデューサーが部屋に戻ってくるんです。
森久保は机の下で頭を抱えているんですけど、足音のリズムで分かってしまうんです……。
プロデューサーの気配が迫ってくると、心臓はうるさくなって、目は勝手に涙目になって、
背中にあたる冷たい机の感触が、もう逃げ場は無い、と言ってくるんです。
震える手足を身じろぎさせちゃうと、机の下の漫画とか、キノコとかが当たって、
音が少しでも立とうものなら、森久保は体がガチガチになります。
プロデューサーさんは、森久保を探す素振り――いつも、そういうフリするんです――で、部屋を歩き回ります。
足の運びは不規則。おもむろに立ち止まって、意味ありげに足を止めてみたり、
書類を探すような手つきで、机の天板をさすります。まるで自分の背中を撫でられてる気がします。
森久保は、プロデューサーさんの物音だけで、じくじくと色んなものを削られていきます……。
プロデューサーさんは、こんな森久保に今度は何をさせるつもりなんでしょうか……。
エクトプラズム吐くほどの衣装を着せられるのでしょうか……。
歌詞を読むだけで眩暈がする歌を練習させられるのでしょうか……。
鏡で自分の姿を見られないようなダンスをさせられるんでしょうか……。
それとも、プロデューサーさんのを……。
プロデューサーさんに今までされてきたことが、
森久保の頭でぐるぐる回って渦巻いて、自分でその渦に飲まれていきます。
プロデューサーさんの足取りが机の前で止まりました。
ピシリと伸びたスーツに、黒光りする革靴。その足音が不意に止むと、たまらないんです。
森久保が距離感を読み間違えてやしないか、こんなに長い間足音が止むなんて、
ひょっとしたらプロデューサーさんは、この部屋を出て行っちゃったのでは……。
そうして、目を上げると、プロデューサーさんは立ち尽くしたままなんです。
きっと、森久保の心臓があんまり速く打つものだから、時間の感覚がおかしくなってたんです。
プロデューサーさんが目の前に立っていると思うだけで、森久保は金縛りにされてしまいます。
プロデューサーさんが、椅子に腰をおろします……。
無造作に、どっかと座って、椅子がギシリと鳴って、森久保の足のすぐそばに、
あの爪先のとんがった革靴が投げ出されます。森久保は必死で足を引きます。
反射的な動きで、足裏で床を擦ってズリズリ音を立ててしまって、自爆してしまいました……ば、万事休すですか……。
そう思うと、あれほど恐ろしく思えたプロデューサーさんのスーツ姿から、
森久保は目が離せなくなるんです。プロデューサーさんが机を覗きこんで、森久保を見つけた瞬間、
森久保はプロデューサーさんを見上げてなければいけない気がするんです。
前は、人と目なんか絶対に合わせられなかったんですけど……
いや今だって、まだまだキツイのに、どうしちゃったんでしょうね……。
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