7: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/06/29(金) 19:44:43.18 ID:XuoQ6Ng60
そうして、そんな気持ちを囃すような行ったり来たりのワイパーが、
何度目かの雨を拭った時にプロデューサーは口を開き――
無意識のうちに自分の身体を守るみたく、私は唇を噛みしめ身を縮めた。
静かな車内に彼の声。
それと、ラジオから流れてくる慟哭めいた喜びの歌。
……訊き返したのは秒遅れだった。
多分、さっき起こされた時よりもよっぽど酷い顔をしてたと思う。
それぐらい彼の返事は意外な物で、だけど、本当は心の底から求めていた物で。
同時に夢を見てるんじゃないかって、気づけば少し涙ぐみ、
「嬉しい」と口にした私の頭に彼の大きな手が重なり、
涙の止め方を忘れてしまったみっともない少女を乗せて、
車はサービスエリアへとゆるやかに到着したのだった。
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