勇者「休暇?」女神「異世界転生しすぎです、勇者さま」
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404: ◆Rr2eGqX0mVTq[saga]
2018/08/01(水) 01:38:18.29 ID:9OC/ch8I0
「いつだったか、『十年女を磨いてから、出直してこい』って言われたっけ」

「今の私、あなたにとって少しでも魅力的になってるのかな」

「……そうだったら、いいな」

風景は何も答えず、ただ波の音を返すだけ。

ポケットの中にいつも肌身離さず忍ばせている、お守りを取り出した。

何の変哲もないビー玉だ。だけど、彼はこれをお守りだって言ってて、私に持っていてほしいと、最後の夜に渡してくれた。

私にとっては唯一の、あの日々を証明できる物。

ふと、自分の座っている傍らに目を移す。初めて会った日の非現実的な光景が脳裏によみがえってくる。

もしも、今この瞬間に、この場所に彼が現れたら、どれだけ私は幸せなのだろう。どんな声を上げてしまうんだろう。

楽観的過ぎる自分が滑稽に思えてきた。

今も、彼は戦っているかもしれないのに。たくさんの人たちを救うために、走り回っているのかもしれないのに。

なんて自己中心的な女なんだろう、自分は。なのに――。

「……早く、帰ってきてよ」

そう、声に出さずにはいられない。

「寂しいよ……。不安なんだよ……」

自分の体温でもう冷たくないビー玉を、手の中で強く握りしめた。


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