27:名無しNIPPER[saga]
2018/08/18(土) 17:29:51.48 ID:DgRDLX8+O
あと30分もすれば、他のアイドルたちが帰ってくる。
香車や銀や角たちが。
ならば俺は歩兵でいよう、なんていう気取ったことを考えた。
どこまで進んでも金には成れない歩だけれど、俺にはそれでいい。
「このまま銀をあげちゃいますよ~!」
その声とともにパシっ、という乾いた駒音が小さく響き、俺の手番が回ってきた。
自陣の桂馬に目をやると、最初に置いた場所でまだ控えている。
「そろそろ桂馬の出番かな」
「むむむ~?ピョンピョン跳ねちゃいますか~?」
そう言って両手を頭の上に乗せ、ウサギの耳のように動かしている美也。
よし、いつか教科書に載せる写真はそのポーズにしようか。
乾いた音が再び響き、桂馬が跳ねた。
グラスの中では、溶け始めた氷がぶつかる音。
将棋盤の向こうには、高く高く跳ねる日の訪れを待つアイドル。
満面の笑顔の中に、かすかな汗をにじませながら。
あぁ、将棋はやっぱり夏だ、と思った。
お し ま い
33Res/19.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20