2:名無しNIPPER[sage]
2018/06/16(土) 20:59:09.74 ID:5SUXe4Aj0
竜児「よし、あとは仕上げだな」
玄人たる竜児はルーを入れて満足しない。
仕上げに、たっぷりの牛乳を入れるのだ。
そうすることで、まろやかさやコクが深まる。
牛乳を取り出すべく、冷蔵庫を開ける。
中は綺麗に整頓されていて、すぐに発見。
そしてそれをドバドバ鍋に注ごうとして。
竜児「ん?」
ふと、牛乳パックの上部に目が留まる。
そこに書かれた賞味期限は、数日前の日付。
竜児としたことが、見誤っていた。失態だ。
本来ならば期限が切れる前に使い切るのが一流の職人である。自らの読みの甘さが情けない。
竜児「うーむ」
竜児は悩む。牛乳を入れるべきか否か。
たとえ数日とは言え、期限切れは期限切れ。
本来ならばそれを使用するのは御法度だ。
もちろん、冷蔵庫に入れて保管しているが、季節は梅雨。朝食時に飲んで、テーブルにしばらく置きっ放しだったこともあるかも知れない。
竜児は双眸を眇めて、牛乳を凝視。
別に、ガンつけているわけではない。
逡巡しているのだ。要するに、迷っていた。
別に、牛乳を入れずとも問題はない。
ルーを入れた時点でシチューは完成した。
だが、料理において妥協はしたくなかった。
竜児「どれどれ?」
一応、匂いを嗅いでみる。
特に異臭はしない。大丈夫そうだ。
しかし、断言は出来ない。季節は梅雨なのだ。
やはり、やめておくべきか。
わざわざ危ない橋を渡る必要はない。
竜児が牛乳を諦めかけた、その時。
大河「まだ出来ないの!? こんだけ待たせた挙句に美味しくなかったら承知しないから!!」
逢坂大河に吠えられ、決断した。
時には、危険を冒すべき場面もある。
虎穴に入るならば、美味い飯を用意せねば。
竜児「ええい、ままよっ!」
竜児は悩んだ末に、牛乳を投入。
これで特製シチューは仕上がった。
念入りに煮沸消毒したいところではあるが、大河に急かされているので断念せざるを得ない。
竜児「へい、お待ち!」
大河「どんだけ待たせるのよ!」
プリプリ怒りつつも、大河は笑顔だった。
どうやら、間に合ったらしい。
しかし、牛乳に関しての懸念は拭いきれない。
一抹の不安を抱えながらも、晩餐が始まった。
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