2:名無しNIPPER[saga]
2018/06/15(金) 00:09:54.63 ID:1KrY7Zfp0
「もしかして、まだ気にしてるの? 去年のこと」
頭の後ろで手を組んだ夏紀は、すごく乾いた声でさらりと私の心を覗き込んだような問いかけをする。
私は何も言わず、すこしはなれた場所でちかちかと光る屋台の灯りを見つめていた。
「べつに。私はそんなこと、思ったことはないよ。もっとも、そう思えるほど何かに打ち込んだ経験もこれまで一回もなかったし」
だから、逆にそういうのちょっと憧れる。夏樹は冗談を欠片も感じさせない声で、そうこたえた。
「だけど、珍しいじゃん。優子がそんな話するの」
「まあね。なんだかふと思い出しちゃってさ。でも、もう忘れて。……ほんと、なんでこんな話アンタにしちゃったんだろ」
「なーんだ。てっきり、あの優子先輩も、オーディションを前にしてついに怖気づいたかと思った」
誰が怖気づいたって? と眉間に皺を寄せる私に、夏紀はいつもの笑顔を浮かべながら、ひとりでお腹を抱えていた。
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