九頭竜八一「強くなる秘訣が知りたいですか?」空銀子「知りたい」
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2:名無しNIPPER[sage]
2018/06/12(火) 20:57:21.78 ID:DuefMiIs0
どれだけ時間が経っただろう。
傍らのチェスクロックを見やると、持ち時間はほとんどない。相手はたっぷり残している。
とはいえ、既に時間など意味はなかった。

銀子の囲いは、見るも無残に朽ち果て。
オロオロと逃げ惑う玉将はまるで自分のよう。
どこに逃げればいいのか、見当もつかない。

たぶん、詰んでいるのだろう。
自分には手順がさっぱりわからない。
しかし、目の前の将棋星人には見えている。

だから見えない銀子は形作りをしようとして。

銀子「っ……!」

ギシッと、廊下から足音が聞こえた。
対局相手がそちらを見やり、息を呑んだ。
銀子も息を止めていた。顔が酷く熱い。

他の三段達も、その存在に気づいたようだ。
ピリピリとした緊迫感が伝わってくる。
銀子は思わず自分の飛車に視線を向ける。
対局相手は、既に成り込んでいる、『龍』へ。

他の三段も、皆その駒を意識しているだろう。

ふらりと現れた、その男の肩書き。
『竜王』の存在を、意識せざるを得ない。
そちら見なくとも、わかる。竜の王の気配。

ずっと、一緒だった。
よちよち歩きの雛の頃から、共に育った。
やがて彼は『竜』となり、自分は飛べぬまま。

『竜王』、九頭竜八一。

彼はたびたび観戦に訪れる。
もっとも、いかにプロと言えども、そして最高峰のタイトルホルダーと言えども、神聖な三段リーグに干渉することは許されない。
しかし、監督の先生が注意する素振りはない。
それが良い刺激に繋がると踏んでいるからだ。

皆、飛車に、龍へと手を伸ばす。
居飛車党だろうが振り飛車党だろうが皆同じ。
銀子も形作りなど捨て置き、飛車を成り込む。

最強の駒である『龍』で、決戦を挑んだ。


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