橘ありす「人生の墓場へようこそ」
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12:名無しNIPPER[saga]
2018/06/05(火) 15:31:52.57 ID:7FWENaXv0
   《橘ありす『二人きりの事務所ってもう実質これ同棲生活と言っても差支えないですよね』》



 ◇

正直に言えば驚いていました。
まさか、あそこまでプロデューサーが真剣に考えてくれていたなんて。

いえ、まぁ、……当然なのかもしれません。

これが、大人ってことなのかもしれません。
というか、私だってちょっと前まで小さなお子様だったわけです。

ちょっと下手をロリコン扱いされるこのご時世です。
もしかすると、その誹りすら受けることを覚悟してまで、紳士的に私を見守っていてくれたプロデューサー。

これが、真実の愛ってやつなのでしょうか。
すごい、なんか少女マンガみたいな響きですっ、真実の愛。
本当の愛はここにあったんですよっ!

ほ、ほんとにっ、ど、どれだけわたしのこと大好きなんですかねっ!ほんとにもうっ、困っちゃうじゃないですかぁっ!

「期待、しちゃいますね?」

あーっ、あぁ゛ーっ!

しょうがない、しょうがないですよね。
もう、私が面倒見ちゃうしかないですよね。うひ、ふへへ。

無意識に口元が緩んでいたのか、口の端から涎が零れ落ちそうになる。
慌てて、私は口元に掌をやってそれを乱暴に拭いかけて、気づく。

そう、気づいてしまう。
流石に想い人の前で涎を拭うというのは――ナシだ。乙女的にというか、それ以前に人間的にです。



瞬間的に、呼吸を止める。――集中。
―――意識して血を昇らせる。

一瞬だけ眩暈のような、くらくらする感覚。
顔全体に火照りを感じる。
きっと視覚的に見ても頬や耳のあたりまで赤みを見て取れるようになっているでしょう。

「そ、そんなにじっと顔見ないでくださいっ!」

私は、籠った熱と一緒に一つ言葉を吐き出す。
その言葉を聞いて、微笑ましいものを見るような、そんな微かな笑みを浮かべてプロデューサーは口を開いた。

「顔見られたくらいで照れるって子供かよ」

「放っておいてください」

そして、恥ずかしさから、プロデューサーの視線を遮るように私は顔を隠すかのように掌をやる――ふりをして、しれっと口元の涎を拭った。



―――よし。私の乙女は救われました。


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