【モバマスSS】愛を知らない一ノ瀬志希と彼らの巡礼の旅
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33: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:48:25.73 ID:dFhLHRCO0
ところで話は変わるけど、アタシは基本的に答えが分かっちゃった問題にはキョーミが持てないんだよねー。
そこに分からない何かがあるならそれを知りたいと思うけど、分からないから知りたいのであって、分かってしまったらそれは分かっているものだから、分かっているものをいつまでも考えていても意味ないよね?だからアタシは次の分からないものを探すの。
それが周りには失踪してるみたいに見えるみたいだけど。でもアタシにとってそれは単なる移動に過ぎないから、アタシがアタシの中で失踪をしたと思ってるのは1回だけなんだー。
あ、今を含めると2回だったね。でも改めて考えてみると、今のアタシは失踪してることになるのかな。どうなんだろ。
目的はあるけど、目的地は無い。仮説がないのに実験してる感じかな?移動先が決まってないなら移動じゃないけど、消えること自体が目的でもないから失踪でもないのかな。
以下略 AAS



34: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:49:34.83 ID:dFhLHRCO0
カンワキューダイ。
なぜアタシが大学を辞めたのか。簡単な話だよー。
だって分かっちゃったんだもん。ダッドには追いつけないって。
客観的な観測による歴然とした事実として、勝てないことを理解してしまったの。
何よりも、怖くなっちゃったんだ。彼という存在が。
以下略 AAS



35: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:50:24.44 ID:dFhLHRCO0

それで、逃げた。

ここにいるアタシにこれ以上意味はないと分かってしまったから、それはもう分かっている事実。それなら、もうここに居続ける理由は無かったから。
そう、これがアタシの人生初めての"失踪"。
以下略 AAS



36: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:51:08.80 ID:dFhLHRCO0
さ、て、と……大学には寄らなくてもいいかな。
あそこじゃ結局、天才から逃げたアタシと、アタシから逃げた誰かさんしか見つからなさそうだし、それはアタシが探してるものじゃないから。
どうしようかな。アタシは頭を抱えるのです。
だってもう、探せる場所無くなっちゃった。やっぱりアタシの中に、彼と同じものなんて見つかりそうにないんだけど、文香ちゃんが嘘をつく理由も無い。
間違っているとすれば、文香ちゃんのアドバイスという前提じゃなくて、こんな探し方を選んだアタシの導出方法のハズ。
以下略 AAS



37: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:52:06.36 ID:dFhLHRCO0


最初に訪れたのは、つい先日志希がライブをしたばかりのアリーナ。うちの事務所所属のアイドルのみによる盛大な新春ライブの中で、志希は他のアイドルたちに負けぬパフォーマンスをしてみせた。
息を切らしながらも満足げな顔で飛びついて来ようとする志希を、俺は片手で制して叱ったっけか。「ご褒美くらいくれてもいいのに」と拗ねる志希に、「お前ならこれくらい出来て当然だ」、と。それは本心だ。
志希は「キミはいつも、アタシが想像もしなかったアタシを創造してくれる」と言っていたが、俺がしたのは志希が持っているものの気付いていないだけの能力を前提にしてプログラムを組むことだけで、とどのつまりそれは志希本人の才能に過ぎない。
以下略 AAS



38: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:52:44.14 ID:dFhLHRCO0
次に俺が訪れたのは、何の変哲も無いファミリーレストラン。しかしここは、先ほどのライブに参加するアイドルを決めるオーディションに、無事合格したことを祝う……という題目で志希が俺に夕飯を奢らせた場所だ。
いつも通りの飄々とした態度を取っているつもりだったのだろうが、オーディション前に指先が震えていたのも、初めてリベンジというものに挑戦し、本気になることが出来た自分に驚いていたのも、それに喜んでいたのも、知っている。
それでいい。俺はそう思った。如何に天才が空飛ぶ鳥の如きものだとしても、羽ばたかなければ地に墜ちる。志希は、天賦のそれに胡座をかいていて良い存在ではないのだから。


39: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:53:30.00 ID:dFhLHRCO0
その次に訪れたのは、とあるレコーディングルーム。
初めて志希が、自分のソロ曲を収録した場所。
歌詞に一通り目を通した志希が小さく、「昔のアタシならやったのかな」と呟いたのを、俺は聞いていた。しかしその真意を問うてはいけないような気がして、何も聞かなかったことにしたのだが。
描き出される狂気の沙汰とすら見える情念。それを理解しているのかいないのか、どちらにせよ志希は、この歌を自分のものにしてみせた。顧客に求められているものと完全に合致する形で、これ以上無いほどにひとつのアイドルとしての姿を打ち出した。


40: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:54:03.83 ID:dFhLHRCO0
次は、都内のとあるビル。流石に中に邪魔する訳にはいかないから、近場の喫茶店へと入る。ここはアイドルとしての志希が初めて挫折を味わった場所。新人アイドル達の登竜門と呼ばれるとある番組のオーディションで、志希はその時の全力を尽くしたにも関わらず選ばれなかった。
人気は右肩上がり、今をときめくアイドルとして名前が売れ始めて少しばかり調子に乗っていた面もあったのか、暫くは珍しく落ち込んでいた。
しかし志希は天才にしては立ち直りが早い方で、すぐにリベンジの為のレッスンに身を投じ始めたのだが。


41: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:54:48.63 ID:dFhLHRCO0
その次は、小さなライブハウス。ここはアイツが初めてライブをした場所。志希にとっての大きな転換点のひとつだ。
終了後、楽屋でアイツは興奮冷めやらぬまま「アイドルって分かんない!」と言い放った。アイツにとっては最大の賛辞だろう。
どこまで行っても唯一解は存在しない世界。それが化学の世界で生きてきたアイツにとってはとても新鮮で、興味深いことだったらしい。
……確か、アイツが俺への興味をやたらと強くしたのもこの辺りからだったか。
正しく猫のようなもので、仕事をしていると構ってもらう為に邪魔をしにくるし、何を考えているのかも分からない気紛れな生活をしている。振り回されるこちらの身にもなって欲しいものだ。


42: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:55:36.36 ID:dFhLHRCO0
考えてみれば俺は何故、志希のプロデューサーであることを選んだのだったか。そもそも何故、俺の様な者がアイドルのプロデューサーをやっているのだろうか。
もしこれを考えさせることが志希の……あるいは鷺沢の狙いだったのならば、俺は見事にその術中に嵌ってしまっていることになる。


43: ◆TDtVvkz8pSL3[saga sage]
2018/05/30(水) 01:56:20.69 ID:dFhLHRCO0
昔から、よく人に言われる。
何をそんなに妬んでいるのか、と。自分より優れた能力を持つ者が目の前にいると、どうしても嫉妬してしまう癖が、昔からあった。
俺には、自分を輝かせることの出来る才能が、何ひとつなかったから。小学校より以前から、何かで一番になった事が無かった。努力しても、努力しても、必ず上には上がいる。
それが堪らなく、悔しかった。才能がある癖に努力を怠る奴を見ると、反吐が出るような思いさえした。

以下略 AAS



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