【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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895: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2019/02/23(土) 22:00:31.94 ID:mQ6adVH+0
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朝の冬空は彩りが薄く、どこか寂しそうに見える。
道を歩く人はそのほとんどが黒森峰へと向かう生徒たちで、私もまたその一人だった。
いつもなら纏ったコートでも防ぎきれない寒さに身を震わせながら歩いているが今日は違った。
寒さなんて気にならないぐらい心が温かく、歩みは淀みない。
けれども、私はどんどんと道を行く生徒たちに抜かされていく。
それは私の歩幅がいつもより狭くなっているから。
そして、そうしている理由はただ一つ。みほを待っているから。
妹は、みほはあの事故以来一度も学校には来ていない。
学生寮の部屋に閉じこもり、誰とも会おうとはしなかった。
無理やり会おうとしたところであの子を傷つけるだけだから、ただ待つ事しか出来ず、そんな状況に歯がゆい思いを感じていた。
そうして何も進まないまま日々が過ぎ、年が明け、もうすぐ黒森峰ではもうすぐ3学期が始まると言った時、突然みほから電話が来た。
『お姉ちゃん、私ね。学校、また行くよ』
その言葉を一瞬理解できず、私は言葉を失ってしまった。
そしてそれが幻聴や聞き間違いでないと理解した途端、私の両目から涙がこぼれだした。
まほ「……そうか、そうか」
声に喜びと泣き声が同居する。
あの事故以来ずっと塞ぎ込んでいたみほがようやく立ち直ってくれたのだと。
『だから、もう部屋に来なくて大丈夫。ちゃんとご飯も食べてるから』
言いたい事はたくさんあったけど言葉に出来ず、私は嗚咽交じりの吐息で返事をした。
そして待ちわびていた新学期の日が来た。
出来る事なら迎えに行ってあげたかったが、みほには断られたし何より自分一人で部屋を出る決意があの子には必要なのかもしれない。
そう思い私はみほの言葉に従って先に通学路を歩いている。
まほ「まだ、か」
先ほどから何度も後ろを振り返っては小さくため息を吐く。
みほの姿はいまだ見えず、その度に胸の中に小さな疑念が生まれてしまう。
みほは、こないんじゃないかと
そう思うたびに頭を振って疑念を散らす。
私があの子を信じないでどうするのだ。
あの子は、自分で決意したんだ。だから、私はあの子を信じる。
そう思いなおしてまた小さな歩幅で歩み始めると、ふと周囲の様子がおかしい事に気づく。
さっきまで通学路に満ちていた生徒たちの和やかなざわめきが小さくなり、代わりに動揺や驚きの混じった囁きが通学路を満たしていく。
先ほどまで前を向いていた生徒たちの視線が後ろを向いていく。
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