【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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826: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2019/02/02(土) 22:06:31.30 ID:fXHa/LYp0




星の見えぬ夜空。

校門の前にある街灯の下に赤星さんはいた。

吐き出す息は白く、それが今の季節を教えてくれる。

時間を見ているのだろう先ほどからなんども携帯を開いては閉じるを繰り返している。

その横顔は何も変わっていなくて……いや、少し痩せたのかもしれない。

寒空の下ではあまりにも頼りなく見えるその小さな姿を、私は少し離れた暗がりで見ていた。


みほ「赤星さん……」


呟いた言葉は彼女に届かせるつもりは無かった。

わざわざコートを引っ張り出してまであの部屋から出てきたのに、私は彼女に声を掛ける事をためらってしまう。

今更、彼女と会ってどうするのか。戦車に乗って何が変わるのか。

部屋を出る前から、ここに来るまでの間、何度も繰り返した問いは未だに終わらない。

分からないから、知りたいから部屋を出たはずなのに。

わかっている。彼女の誘いは私を思ってのものなのだと。どれだけ自分勝手に振舞い、彼女を傷つけたとしても、そのぐらいはわかる。

だから、ためらってしまう。彼女はもう、私を理解してくれない。ならこのまま会わない方がお互いの為じゃないのか。

今の私が彼女に会ったところでまた傷つけるだけじゃないのか。

言い訳染みた言葉ばかりが頭の中に浮かんでしまう。


それを、唇を噛みしめて抑え込む。


気づいていたんだ。わかっていたんだ。『生きているだけ』じゃ、いけないのだという事に。

エリカさんがいない世界が怖くても、それでも私は生きなくてはならないのだと。



『生きて』



呪いのように私を苛むその言葉は、それでも彼女がくれた最後の言葉で、

だから私は、それを果たさないといけない。

辛くても苦しくても、生きないといけない。

たとえ、赤星さんを、誰かを傷つける事になっても、私は――――生きないといけないのだ。

エリカさんのように美しくなくて、エリカさんのように優しくなくて、エリカさんのように強くない私だけど、

せめて、エリカさんがくれた最後の言葉だけは、守りたいんだ。

私は決意を込め、一歩踏み出す。その足音に赤星さんが振り向く。


小梅「みほさん……?」

みほ「……久しぶりだね。赤星さん」




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