【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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761: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2019/01/05(土) 18:00:27.20 ID:sbkqZ6WF0




どれほど経っただろうか。時計を見る事すら出来ない緊張感の中で、雨音が強く、激しくなったことだけは耳で感じることができた。

山の天気は変わりやすいとは言うが、それにしたって急転直下と言えるほどの変動は私たちの予想を超えていた。


小梅「……雨、強くなってきましたね」


言ってからしまったと思う。口にしたところで天気を変えることは出来ない。

風を伴った豪雨は固い戦車の装甲越しに私たちにその勢いを伝えてくる。そんな中で何度もキューポラから顔を出してるエリカさんなんてきっとびっしょりと濡れてしまっているだろう。

風邪をひいてしまうと操縦士の子が車内にいるよう勧めるも、エリカさんはそれを固辞して細かく指示を出している。

先頭車両だからこそ、状況を常に把握して指示を出さなくてはいけない。そう言って豪雨の中ひたすら周囲を警戒し続けている。

そんな中でただ事実だけを伝えたところで何の意味があるのか。ただただ車内の不安を煽るだけになってしまう。


エリカ「ええ……でも、ここまできたら戻るほうが危ないわ。気を付けて、ゆっくりね」


軽率な自分を恥じるも、エリカさんは気にしてはいないようだ。私の軽口に感情を揺さぶられた様子もなく、淡々と冷静に返してくる。

繊細な指示を求められ、全身を雨に打ち付けられているというのに、落ち着いているのは偏に彼女の集中力の賜物なのだろう。

その姿に力強さと心強さを感じ、私を含めた乗員もまた、勇気をもらう。そのおかげか、危なげなく集団は進んで行き、やがて再び外を見ていたエリカさんの口から安堵のため息が漏れる。


エリカ「ゴールが見えてきた。なんとかな―――――止まってッ!!」


その言葉に操縦手が即座に反応する。スピードは出ていなかったものの急な静止に思わずつんのめってしまう。

どうしたのかと尋ねようと上を見た瞬間、轟音が鳴り響く。外の状況は私にはわからない。ただ、一つだけ分かるのは――――砲撃を受けたという事だ。

遅れて無線からみほさんの声が伝わってくる。


みほ『エリカさんっ!?砲撃っ!?』

エリカ「こちらV号っ!!前方に敵車両!!待ち伏せよっ!!」


努めて冷静に、要点だけを伝えようとしているエリカさんの声に私たちも動き出す。先ほどの砲撃はこちらに命中せず、前の地面をえぐるにとどまったようだ。

砲手はすでに敵を捉えているようで、エリカさんの蹴りによる指示と共に射撃を開始する。状況を理解したみほさんもすぐさま指示をだしてくる。


みほ『っ……全車両下がってっ!!』

エリカ「私たちが盾になるから早く下がっ――――」


その言葉は最後まで言葉にならなかった。何かが崩れる音と共に、ぐらりと、体が戦車ごと傾いていく。続いてくる衝撃。


小梅「あ……」


一瞬の浮遊感が永遠のように感じる。重力が横から降ってくる。シートベルトなんかない座席で、装填をしようと不安定な体勢で、持っていた砲弾が私の手を離れ宙に浮く。

庇おうと動く手はゆっくりとしていて、間に合いそうにはない。数キロの砲弾が自由落下で体に当たって痛いで済めば御の字で、

眼前に迫るそれは、たぶん痛いじゃ済まないのだろうなぁと、どこか私を達観させた。

ああ、痛いのかな。こんなことなら反射神経鍛えてれば良かった。どうやって鍛えるのか知らないけど。

そんな事を、呑気に考えてしまった。

その時、


「小梅ッ!!」


聞きなれた声が私の名を呼び、目の前が真っ暗になり――――花のような香りが鼻腔をくすぐった。





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