【ガルパン】エリカ「私は、あなたに救われたから」
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738: ◆eltIyP8eDQ[saga]
2018/12/29(土) 22:54:05.12 ID:Fz/0tnfx0
中等部とは規模も人数も重圧も違う。
そんな中で緊張したまま実力を発揮しろだなんてのは無理な話だ。
もっと言うなら試合で全力を発揮するなんてことは出来る方がおかしいのだから。
その時のコンディションは、メンタルは、如実にその試合に現れる。
緊張なんて無視して出来る事をやれなんてのは『出来る人』の言い分で、『出来ない人』には出来ないなりのやり方がある。
だから、エリカさんのやり方は赤星さんの問題解決には相応しくない。
……ただ、これじゃあ私はただケチをつけただけだ。
エリカさんだって赤星さんの事を思ってのアドバイスだったのに、それを否定しただけで終わっては何の意味もない。
私はちゃんと、代替案を提示しなくてはいけないのだ。
心の中で二度三度頭を捻り、一つ思い付く。
みほ「……赤星さん、カメラ持ってきてる?」
小梅「え?あ、はい。ロッカーに置いてありますけど……」
みほ「じゃあ持ってきて。時間はまだあるから慌てなくていいよ」
小梅「あ、は、はい」
トテトテと早歩き気味にロッカーに向かう赤星さんを見送る。
エリカ「カメラ持ってこさせて何するつもり?」
みほ「記念写真。みんなで撮ろう?」
エリカ「……はぁー?なに気の抜けた事言ってるのよ。今大会がどんだけ大事なものなのかわかってないの?」
みほ「大事な大会なのに緊張して力が出し切れなかったら私たちも困るでしょ?」
エリカ「それは……」
エリカさんは私の反論に言葉が詰まり、やがて諦めたように手のひらを上に向けて差し出す。
とりあえず説明を聞く気になってくれたようだ。
みほ「赤星さんは大会出るの初めてで、その上色々かかった決勝なんだよ。だから緊張するのは仕方がない。でも、いつもやってる事をすれば、ちょっとは落ち着いてくれるかなって」
エリカ「……」
私たちが何かするたびに赤星さんはカメラを向けていた。
『思い出は、記憶の中だけじゃなくてちゃんと形にしておくべきなんですよ』とは彼女の言葉だ。
オクトーバーフェスト、休日に遊びに行った時、何気ない練習風景、誕生日パーティー。
文字通り日常を切り取った写真は見るたびにその時の話題で話が弾む。
なら、今この瞬間も切り取ってしまえば日常に過ぎない。
どれだけ緊張してたって、いつもの様に写真を撮れば、そこに日常を思い出す。
ちょっと手間はかかるがプリショットルーティーンみたいなものだろう。
もっとも、効果があるかないかは赤星さん次第だが。
みほ「赤星さんはちゃんと努力してきたよ。知ってるでしょ?」
エリカ「……ええ。良く知ってるわ」
深く頷く。ああそうだ。私も、エリカさんも。赤星さんが努力してここまで来たことを知っている。
私やエリカさんが、時には両方が彼女の自主練に付き合ってその成長を見てきたのだから。
彼女が決勝のメンバーに選ばれたのは決して運や偶然じゃなくて、純然たる実力なのだから。
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