7:名無しNIPPER[sage]
2018/05/22(火) 19:56:23.48 ID:6LeGnMhJ0
千聖「そんな風にね、ちょっとしたハプニングなんかもありながら、函館までフェリーで渡るの」
千聖「席はビューシート。船首の方にあって、席の前に備えられた窓から景色がよく見える」
千聖「でもね、港を出て30分もするともう海しか見えなくなるのよ、ああいう席って」
千聖「ほとんど何も変わらない景色。ただ波をかき分けて、ゆったりと、まるで動いてないみたいに船は進む」
千聖「中天を過ぎた昼下がりの陽射しが窓から差し込んできて、私たちの足元を柔く照らすの」
千聖「6月。無理を言って平日に旅程を組んだから、ビューシートに人は少ない」
千聖「静かな船室。次第に2人のささめきもなくなって、ただ穏やかな時間が流れるのを感じる」
千聖「言葉というものは人のコミュニケーションに欠かせないものだけど、果たして私と花音の間ではそれにどれほどの重要度があるのかしら」
千聖「そんなことを考えていると、隣に座る花音から小さな寝息が聞こえるの」
千聖「朝からはしゃいでいたし、きっと前日の夜もなかなか寝付けなかったんでしょうね」
千聖「それに胸がくすぐられるの感じながら、私もゆっくりと瞼を閉じる」
千聖「ある人が見ればそれはもったいないことなのかもしれない。けど、私にとってその時間はなにものにも代え難いわ」
千聖「そっと左手を花音の手に重ねて、その存在を、温もりを感じてまどろむ」
千聖「夢見心地、世俗との交差点。その間をたゆたうように船を漕ぐ」
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